放送から3日目

otomojamjam2010-01-20

すでに別の映画の仕事にはいってますが、でもまだ余韻が・・・。



で、そんな余韻の中、今日は、実は手術を。といっても大げさなものじゃなく、首の後ろに出来たアテローマ(良性の腫瘍みたいなもん)の切除。とはいえ、ちょっと大きめだったんで局部麻酔で30分ほど。手術中は痛みもかんじず音楽の話とかを先生としながらだったんですが、終わって、真っ赤に染まった大量の脱脂綿をみてはびびり、麻酔が切れて痛みだしてはびびり。あ〜〜もう、オレほんと弱虫(苦笑。




その街のこども」おかげさまで非常に評判もよく、音楽をつくったわたしのところにも沢山の感想よせられています。
みなさんに返信したいところですが、ひとつひとつ答えられなくてすいません。



エンディングの曲を歌っているのは阿部芙蓉美さん。
今年公開予定の映画「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」(松田翔太主演、大森立嗣監督)の仕事ではじめてご一緒しました。彼女を見つけてきたのは監督の大森さん。これが出会う切っ掛けでした。この映画でも彼女の歌、素晴らしいです。こちらのほうもぜひお楽しみに。


さて、今回エンディングに流れたテーマ曲、もともとは、おっちゃんに泣きながら手をふるサトエリさんのシーンに書いたもので、近藤達郎さんのハーモニカ用に書いたメロディです。
前のブログにもかいたとおり、今回の音楽は本当に難産でした。迷いに迷った中で最初に出てきたのがこのメロディ。最初は歌にするつもりはなく、あくまでハーモニカ用だったんですが、でもほかの曲を書いていくうちに、最後の最後になって、どうしてもエンディングにこの曲を歌にしていれたくなってきました。そのときに思い出したのが阿部さんの独特の声でした。
このアイディアを演出の井上さんや音響の山田さんに伝えたのは録音の数日前。みなの了解をとって彼女に連絡したのは録音直前。メロディだけあって歌詞はなかったので、このときはハミングのみの仮テイクを録音。その後、彼女に歌詞をつくってもらい年あけに録音しなおしました。どうなるかわからない当日撮影のラストに備えてこの歌だけでも、いくつかのテイクを録音しています。


ハーモニカとオルガンを演奏してくれた近藤さんとはもう20年のおつきあいになります。有名なロックキーボード奏者でもあり、映画やテレビ、CF音楽の大家、大先輩でもありますが、実はハーモニカ奏者というもうひとつの顔もありまして、わたしの映画では「スタントウーマン」「ごめん」でもハーモニカを演奏してもらっています。2年前にはわたしのバンドinvisble songsで浜田真理子さんなんかと一緒に欧州ツアーも。大先輩なのに見た目はわたしよりはるかに若く見えるんですよねえ。


ストリングスアレンジやピアノ、セレスタはジュリエッタ・マシーンの江藤直子。わたしのサントラには欠かせない存在です。98年相米監督の「あ、春」以降のわたしの映画音楽の9割に参加してくれてます。90年代にNOVOTONOというバンドを一緒にやってまして、かつ当時はご近所だったこともあって、コードの解釈やらアレンジの相談、はてはコンピュータの使い方まで(あ、ご主人の大津さんはギタリストで、コンピュータの専門家でもあります)、年中おじゃましてました。今回もちょうどテーマ曲のデモをつくっているときにコンピュータが壊れてしまい、深夜江藤家に駆け込み、ハードディスクからデモ音源を救出してもらってます。これもすでにブログに書いたかな。


森山未來さんにはドラムとパーカッションで参加してもらってます。
最後のふたりが走るシーンの音楽も、冒頭の新幹線の中に流れる音楽も、実は10分以上もある長い1曲の一部分で、ここで山本達久と二人で、ギクシャクして、かつざっくりしたドラムを叩いてもらっています。ベースはGROUND-ZERO時代からの朋友、ナスノミツル。実はこの曲は通して聴くと、相当いかれたかんじで通常のテレビドラマに出てくるようなものとは全然違う実に面白い録音になってます。まあ、だいたいテレビの音楽で10分もある曲を録音すること自体おかしい・・・というか、まあプロの劇伴作曲家としてはどうかともおもうのですが、でも、そうしないと出来ないものもある、そんな風にも思ってます。


さらに、ときおり流れてくる静かな曲の中で響いている高音のピーーーンという電子音のような音。これは実はクロテイル(アンティークシンバル)という厚めの金属で作られた打楽器をコントラバスの弓で弾いた音で、この演奏も森山さんがやっています。無論彼にはそうした楽器の演奏経験はありません。でも、このドキュメントのようなドラマの音楽には、実際に出演してる彼自身のリアルな呼吸のようなものが必要・・・そんな風に思っての起用です。
ほかにも彼が参加したかなりふっとんだ曲いくつかあったんですが、残念ながら劇中にはつかわれていません。



わたしのサントラの録音はいつもこんな感じで、特にNHKのドラマでは実際に使われているもの以外にも沢山のテイクを録音します。とりわけ今回のように音色がすべてみたいなサントラでは、いく通りもの異なる音色のテイクを録音してMA(映像音をつける作業)に備えます。


今回その音色を支えてくれたのがトロンボーンとストリングスです。
トロンボーンONJO青木タイセイと、やはりわたしのサントラに古くからつきあってくれているジャズ界の重鎮、松本治。ストリングスはこれまた20年近いお付き合いの工藤美穂さんのカルテット。素敵な音色は彼らのおかげです。


使用ギターは64年製のギブソンSGと、70年代のトウカイのストラト、アンプは65年製のフェンダープリンストン・リバーブ



録音はNHKの506スタジオ、ここは響きが本当にすばらしくて大好きなスタジオ。エンジニアはここのところNHKの仕事では必ずつきあっていただいてる中川原修さんと佐々木志了さん。いろんな意味で彼らとの作業はクリエイティブになれます。またはやく彼らと仕事したい。



実際に映像に音楽をつけていく作業は、NHK大阪局で音響の山田正幸さんと演出の井上剛さんがやっています。山のように録音したテイクをひとつひとつ試しながらの作業は並みの大変さではないだろうと思います。
映画ではこの部分でもわたしが深く関わることが多いのですが、テレビでは、だいたいは音響と演出の方が一緒にやることが多いようです。



サントラCDは出ないのかという質問もきてますが、残念ながら現在は発売予定ありません。
でも将来、要望が多ければ、どこかから出ることあるかもしれません。



再放送については、わたしもわかりません。無論再放送希望しますが、できることなら、劇場公開バージョンを作れないものだろうか・・・そんな風に強く、強く思っています。





阪神・淡路大震災15年 特集ドラマ「その街のこども
出演:森山未來佐藤江梨子 ほか
演出 井上剛
プロデュース 京田光広
脚本:渡辺あや
音響 山田正幸


音楽 演奏 大友良英(作曲、el-g)
江藤直子(piano, セレスタ、el-p, ストリングアレンジ) 
近藤達郎(ハーモニカ、organ)   
松本治(tb) 青木タイセイ (tb)
ナスノミツル(b) 山本達久(ds)  
工藤美穂(violin) 加藤由紀子(violin) 佐藤雅子(viola) 井上とも子(cello)
スペシャルゲストとして
阿部芙蓉美(vo) 森山未來(ds, perc)
録音 NHK506スタジオ 2009年12月〜2010年1月
エンジニア 中川原修  アシスタントエンジニア 佐々木志了