スエーデン「パースペクティブス2009」の報告など

otomojamjam2009-03-11

ロンドンからで〜す。理由は全然わからないんですが、アジア以外の都市では、唯一、ロンドンが住んでもいいかなって思えるくらい好きな町です。別に好きな飯屋があるわけでもなく、天気も悪く、女の子もさほどおしゃれじゃないし、モノも高いんだけど、なぜか歩いているだけで居心地がいい。



さて、先週やったマッツ・グスタフソン・キュレートのスエーデン「パースペクティブス2009」フェス本当に素晴らしかった。マッツが大好きな人を集めただけのフェスともいえるけど、そこがいい。その個人的な感じが。
坂田明トリオに感動し(高校生のころPITINNにかよいつめて聴いた山下洋輔トリオのあのクオリティが現在形になってるかんじです)、ボルビトマグースや非常階段は言うまでもなく、そして大ベテランの即興演奏家スベン・アイク・ヨハンソンのパーカッションソロや、目もさめるようなザビエ・シャルルのとんでもないクラリネットソロ、filametですら普通の音楽に聴こえてしまうような宇波拓の形容しがたいソロ、重鎮ブロッツマンの神々しいソロ・・・等々、こころゆくまで楽しみました。ほんとマッツらしいセレクション。


で、久々のfilamentの演奏。filament boxをマッツが聴いたときから、彼はこのフェスに僕等を呼ぶことを考えていてくれたのだ。こういうオファーはうれしいもんです。
filament自体の演奏は多分2年ぶり。自分で言うのもなんですが、いい演奏だったと思う。即興でもなく、いわゆるノイズでもなく、現代音楽でもなく、ましてやエレクトロニカでもなく、こんなものそれ以前にだれもやってなかったし、まあ今もだれもやってないわけで、はじめた11年前は、完全にどこからも相手にされないつめた〜いいや〜な感じがあったりして、こうして今現在フリージャズや即興の巨匠たちや、ノイズレジェンドたちと一緒にこういうフェスに出るってことに実は感慨深いものがあったりもするのです。終わった後ステージに坂田さんが飛んできて「素晴らしい」の一言とともに、がっしり抱きしめてくれたときは本当に泣きそうになったなあ。



わたしと似たような世代のマッツにとっては、フリージャズも、即興も、ノイズも、そしてfilamentのような音楽や、あるいはポップスであろうと、そういったスタイルに関係なく、非常に重要な音楽なわけで、この感じはわたしもものすごくよくわかります。多分、こういう感覚は、今はかなりの部分で共有されてるとは思うだけど、そういう個人的な感覚って、なかなか表にでないけど、こうした200人300人規模の個人の顔が見えるフェスだと明確に出るんですよね。マッツはステージにほとんど顔を出すこともなく、音楽に一切口を出すこともなく。ひたすら観客としてそれぞれの音楽を楽しんでいた。あいつ自分はこの音楽に囲まれているだけで幸せなんだ顔をしてたなあ。オレ、彼のその気持ちすごい良くわかる。場をつくるけど支配はしないあの感じ。


きっとJOJO広重さんも似たようなことを考えてたんだと思う。彼のブログにもそういうことが書いてあります。



で、今週はロンドン。ここに昨年あたらしく出来たcafe OTOでわたしとSachiko Mを中心とした3デイズです。
98年にいちはやくfilamnetを評価してくれたのはロンドンのミュージシャン達でした。LMCの人たちやエバンパーカー、AMMや、当時はまだ無名だった若いミュージシャン達が僕等を評価してくれたことがどれだけ励みになったか。僕等みたいに、金にもならない、いってみれば特殊な音楽をやってる連中ってのは、こういった評価や敬意だけで、充分生きてける・・・あのときは本当にそう思いました。あ、ロンドンが好きなのはそういう理由かも。これって居場所があるってことなのかな。そういうことと、マッツがやってること、オレの中ではなんかつながってるんですよ。ちょっと浪花節みたいな書き方になって恐縮ですが・・・・。でも、そのことがオレにとっては希望。世界の未来に対する希望。



ロンドンのセットにAMMのエディ・プレボーや、エバン・パーカーを呼んだのはそんな理由です。昨日はクリスチャン・マークレーとの、これまた10年ぶりの共演したり、cafeOTOとは、多分この先もいろいろと未来につながるような企画を話し合いだしたりしてますが、そのへんについてはまた次回の日記で。


写真は快演 坂田明トリオ、見事なスネアソロを聴かすスベン・アイク・ヨハンソン 







cafe OTO 3days @ London

3月9日  SachikoM solo、Otomo Yoshihide solo
Eddie Prevost,SachikoM, Otomo Trio

3月10日 Filament
     Christian Marclay+Sachiko M+Otomo Yoshihide

3月11日 Otomo, SachikoM, Evan Parker John Edwards、Tony Marsh Quintet
     John Bucher+Otomo Yoshihide / John Bucher+Sachiko M