旧友と君が代の続編

6月15日の日記に書いた高校の音楽の先生をやっている大学時代の友人Oさんからメールがきました。この日記も読んでいてくれたんですね。Oさんの許可をとってメールを添付します。

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大友くん
先日は、突然でびっくりさせてしまいましたね。ごめんなさ
い。だけど、レクチャーでもその後の会でも、いろいろな話を
聞けてとても楽しかったです。昔の友人が活躍しているのは、
本当にうれしいものです。
 日記を読ませてもらいました。君が代のことを書いてくれて
ありがとう。教員が学校の中のことを外に知らせるのは意外に
難しいことなのです。大友くんが書いてくれたように右左がな
いかといえば、20年以上の教員生活の中で築かれたものがあ
って、絶対に右ではないということははっきりしています。今
の右に偏った流れは本当に危険だと思っていて、君が代を弾く
ということは自分もその片棒を担ぐことになると感じています。
東京都教育委員会は校長に教員一人一人に職務命令書を出す
ことを指示して、起立することやピアノ伴奏することを強制し、
逆らえば処分すると脅しています。実際に今まで300人以
上の人がそれを拒否したことで戒告処分を受けています。それ
以外の人も、皆そのようなやり方に不満を持っていますが、生
活もかかっているので大半はやむなく従っているのが現状です。
そもそも、どんな音楽でも命令されて演奏するなんてありえな
い話ですよね。
 異動した先の校長からも、4月の入学式で休んだことについ
て次は休暇を認めないと言われてしまいました。 税金を使っ
て全校に配布した立派なCDがあるのにもかかわらず・・・。
こうなったらピアノの前で弾かずに座っていようかなと思って
います。
 なんと、この私が何百人もいる仲間と、そのことで裁判の原
告にもなっています。
予防訴訟
http://homepage3.nifty.com/yobousoshou/

25日の森下でのコンサートは売り切れだそうですが、ぜひ聴
いてみたくなったので当日券で行きます。それでは、25日に。

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大学の頃、ほんとうにおっとりとした、どこまでもやわらかくっておだやかだったOさんをここまで追いつめるって・・・ってちょっと、深刻に考えてしまいました。わたしのように好きな音楽だけをやっているミュージシャン稼業を長くつづけていると、人に強制されて演奏するってことのリアリティがまったくわかりません。そんなの戦前の日本じゃないんだから、ありえないじゃん・・って思ってしまいます。だいたいなんで学校で、しかも公立の学校で強制的に音楽をうたわせられるのかもわけがわからない。これが君が代ではなくて、ベートーベンだろうと、ゆずだろうと、坂本九のうたであろうと、同じことで、嫌いなもんはうたったり伴奏したりしなくていいじゃんってオレはまあ、普通におもうわけです。
でもたしかに学校って嫌いな歌でもうたわなきゃいけない空気って昔からあったなあ。昔から。拒否するなんて相当勇気があるか、相当嫌いじゃないとできない。学校って、そういうところだった。だからオレはいつのまにか高校にいかなくなってしまって、かろうじて高校は温情で春休みに図書館にかよって出席日数を補ってださせてもらったけど、大学は結局ほとんど行かずに中退。学校ってのはそもそも全体主義的なところではある。
でも、ま、オレのことはいいとして、ことが「君が代」ってなると、単に、歌の好き嫌いの話ではなく、この曲が国歌かどうか・・・て議論から、天皇制や戦争の問題にまで、人それぞれ様々な意見がでてくるわけだから、事は、もうむちゃくちゃややこしいだろうなってことは想像つく。おまけに、Oさんのメールを読むと、いまや君が代が踏み絵になってるんですね。島原の乱のころから為政者のやることって、なんでいつもこんな陳腐な方法をとるんだろ。逆にその陳腐さが、為政者の駄目さぶりをあぶりだしているのにねえ。ま、どんな場合であれ「国歌を歌うことを強制するような状態がおこる・・・」というのが全体主義国家の定義だとわたしは思っています。おまけに、歌わない人を罰することによって歌う風に仕向けるというのは恐怖政治だと、わたしははっきり思います。で、わたしははっきりと全体主義にも、恐怖政治にも反対したいと思っています。そんなわけで、Oさんの報告は、まるで70年代軍国主義と恐怖政治の真っ只中にあった韓国から匿名で毎月手記を送ってきた「TK生」のレポートを読んだときとおなじくらい衝撃でした。日本ってここまで腐ってしまってるんだってね。ここまで全体主義と恐怖政治に対して歯止めがきかなくなってるんだって、正直愕然としています。
しかしOさんは正面から戦っていてえらいなあ。もしオレがなにかを暴力で強制されるようなことがあったら、怖いから、逃げるか、もし逃げられなければ、その場では、とりあえず幇間のように「はいはい」っていってやるか、じゃなきゃ仮病をつかうかもしれない。あ〜いやだいやだ。お国のためみたいな考えがはびこる世の中なんて冗談じゃない。集団をつくって勇ましくなるオトコどもがはびこったら、ぼくら文科系は肩身かせまくてしょうがないもの。オレらに必要なのは、もたもたしたよく意味もわからない、誰を称えているのかもわかりにくい、雅楽のトランス感さえ去勢してしまったような国歌なんかじゃなくて、エリントンのような素敵なダンスミュージックやら、がが〜んと行くノイズ・ミュージックやら、わけのわからない弱音即興とか、ひきこもりみたいに下をむいて演奏する電子音とか、本物のパンクとか(いまはやりの青春パンクじゃないよ) へんな歌をうたうおっさんとか、そういう好き嫌いのはっきりと別れる音楽だと思うんだけどね。国中みなで歌わなきゃいけない音楽なんて、どんなもんであれオレは大嫌いだ。ちゃいまっか? おえらいさん。
はやくやめてくれないかな、あの偉そうなプレスリー好きの総理と、人種差別発言を平気でしてしまう都知事。ロックンロールはそういうもんじゃないだろが、え、おっさん! ってか選挙で落としましょうよ。ね、あいつらとそれを支える勢力を。