今日はアジアンミーティングフェスの話を

ずいぶん前に予告していた「アジアン・ミーティング・フェスティバル」いよいよ具体的になってきました。
この20年、わたしは、それこそ欧米のいろいろなミュージシャン達といろいろなところで沢山共演をしてきました。欧州にいけば、出身国の違いなんて、日本で言う出身県の違い程度とまではいかないけれど、それに近いくらいの感覚で、いろいろなミュージシャンが当たり前のように行き来して、交流し、影響をあたえあったりしています。こんなふうにアジアでもなればいいなって、ずっとココロ密かにおもっておりました。
でもこんな素敵な状況、欧州にも昔からあったわけではもちろんありません。だってたった数十年前にはドイツ人とフランス人が殺しあっていたんですから。今の彼らの、自由な行き来は、最初からあったものではなくて、この何十年か、特に70年代以降、多くのミュージシャン達が試行錯誤をしながら勝ち取ってきた自由なんです。
こんな素敵な交流、僕等のまわりにもあってもいいですよね。
実はわたしの最初のリーダーアルバムは香港からでたものでした。1992年のことです。このときアルバムをつくってくれた香港のミュージシャンでレーベルプロデューサーのディクソン・ディーは、当時はわずか20歳。彼はずっと中国語圏のミュージシャンが自由に行き来できる状況、中国でも様々なあたらしい音楽のライブがやれる状況をずっと夢見ていました。この十数年、彼は、北京語、広東語、英語を駆使しながら、中国本土や台湾、そして欧州を行き来し、独自のネットワークを築いています。彼の協力を得て、台北と北京からひとりずつラップトップをつかった音楽家を呼ぶことにしました。もちろんディクソンにも来てもらいます。
もうひとつの僕等の大切な隣人は、朝鮮半島に住む人々です。とくにソウルには、カン・テーファン、パク・ジェチュンといった素晴らしい即興演奏家が70年代80年代から活動をしています。が、今回はそういった重鎮ではなく、20代のあたらしい世代を呼ぶことにしました。数年前からソウルに住んでいたミュージシャン佐藤行衛さんは、地元に住む若いミュージジャン達とともに自主企画で毎月のように、ノイズや即興のライブ企画をはじめました。そこにはソウル在住のドイツ人やアメリカ人まで参加し、様々な言語がいきかいながら、欧米や日本の即興やノイズとはまったく異なる、あたらしいシーンが誕生しています。今回はその佐藤さんの協力をあおぎ、ソウルの新しい世代の即興やノイズのミュージシャン5名を呼びます。
日本からは、今回は、わたしのわがままで、まずはI.S.O.、そしてわたしのオーケストラのメンバー達、それから反野田拓、杉本拓、伊東篤宏といった人たちを招きます。
23日は、紹介の意味をかねて、まずは来日勢それぞれの演奏を。24、25日はわたしのオーケストラに、来日メンバーが入ったり、それぞれのソロや小編成のコラボレーションがある中で、いつものONJOとはまったく異なる、壮大な実験をやる予定です。その実験のなかには杉本拓の作曲もありますし、今回始めて参加する一般公募のアマチュアミュージシャン部隊の加わったわたしの作曲作品もあります。
なにがおこるか私自身も分かりません。ただ、僕等は、こういう場を通して、あらたな可能性を探っていきたいって強く思っています。4月17,18日のＪＡＭＪＡＭ日記で、中国の反日デモについて書いたのですが、このフェスが、あの日記で書いたわたしの回答でもあります。なれあいでもなく、対立でもなく、民族や国を単位にものを考えるのではなく、近所に住んでいる音楽家同士が、まずはツラをつきあわせて、互いのことを聴きあってみる。ためしに一緒に演奏してみる。そんな手探りからはじめたいって思ってます。

■アジアン・ミーティング・フェスティバル ■新宿PITINN http://www.pit-inn.com/
前売￥3,500 当日￥4,000 　 9/25（昼）前売￥2,500 当日￥3,000

9月23日(金) ディクソン・ディー（Laptop/香港）ディノ（Laptop/台北）ワァン・ファン（Laptop/北京） / I.S.O.【一楽儀光（Per）SachikoM（Sinewaves）大友良英（Turntable）】/アストロノイズ【ホン・チュルキ,チェ・ジュニョン（Electronics/ソウル）】リュー・ハンキル（Electronics/ソウル）ジン・サンテ（Electronics/ソウル）ジョー・フォスター（Tp/ソウル）

9月24日(土) 9月25日(日) ONJOスペシャル
大友良英（G）ディクソン・ディー,ディノ,ワァン・ファン（Laptop ）ホン・チュルキ,チェ・ジュニョン,リュー・ハンキル,ジン・サンテ（Electronics）ジョー・フォスター（Tp）佐藤行衛（G/ソウル）Sachiko M（Sine waves）大蔵雅彦（Sax,Tubes）津上研太（Sax）青木タイセイ（Tb 25日のみ）水谷浩章（B）高良久美子（Vib）芳垣安洋（Ds）一楽儀光（Per 24日のみ）半野田拓（G,Elctronics）伊東篤宏（Optron）　杉本拓(作曲　24日のみ）カヒミカリィ（Vo/24日,25日）　他　アマチュアのゲストミュージシャン多数。

9月25日(日) 開場15:00 開演15:30 終演予定17:30 海外勢を中心に上記メンバーの選抜部隊によるセッション

◎新宿ピットインにて、チケット（予約可）前売り中。

今回来日のミュージシャンの交通費、滞在費はみなさんのカンパでまかなう予定です。いくらでもかいません。趣旨に賛同してくださる方は、カンパよろしくお願いします。振込先は右のくるくる回るターンテーブルをクリックすると出てきます。