ONJO JAPAN TOUR 総括
ONJOツアー後しばらく日記の更新がとまっていたのは、ツアー疲れで休んでいたためではありません。実は冨樫森監督「天使の卵」の作曲でうんうんと、アタマを抱えていたからであります。今日どうにか基本になる2曲が出来上がって、江藤直子家のスタジオでデモを作って、監督のOKがでたところ。監督にこのデモを最初に聴かせる瞬間は、いつもそうだけど、まるで小学生が初めて通信簿をもらうときのような気持ち。
この2曲に至るまでに、何曲かつくっていて・・・今回はいつもより時間かかってますが、とりあえずはほっとしました。ここに至るまでが、いつも長くて、時に苦しい道のり。これを越えると、あとはかなり具体的な作業で、映画の時間軸にあわせた曲ごとのアレンジやその譜面書き、録音の段取りの決定といった作業。実は、ここにもかなりの時間がかかります。これをしっかり締めておかないと映画の録音は出来ないのです。
これから2日半で改めて全二十数曲分の作曲とアレンジをして、で、次の2日間で実際にスタジオにミュージシャンが集まり録音とミックス。まだまだ今は最初の峠を越えただけで、さらにもっと大きな峠がこれから週明けまで続きます。
さて、ONJOのツアー、本当に沢山の皆さんが来てくれて、PITINNは連日約200人、名古屋は250人で、どちらもほぼソウルドアウト。京都も500人(有料で400人以上)もの方がきていただき、ツアーチーム、企画チーム、メンバー一同を代表して、あらためて御礼申し上げます。
ありがとうございました。
それから企画をしてくれたみなさん、スタッフの皆さん、ご苦労さまでした。おかげさまで、この時期にしかありえないONJOの音楽を創ることができたと思います。感謝してます。
内容については、様々な人たちがプログやいろいろなサイトで感想を書いてますので、そちらのほうに譲るとして、ここではひとつだけ引用させてください。京都の公演を企画してくれたTさんの日記からです。
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500名ほどの方にお越しいただいたONJO Japan Tour 2006の京都公演を無事に終えることができました。
今回の企画意図は、良い環境で座って聴きたい。それだけ。
ONJOは、“ダンスミュージック”や“フリージャズ”のように肉体的ものではないとわたしは思っている。
どちらかというと肉感的なものだ。
音を身体で受け止めて感じる。
受け止めるには表面積が多い方が良い。
だから、スタンディングでぎゅうぎゅうするよりも、座って多くを受け取る体勢を作りたかった。
ONJOには、“楽器”と“楽器”ではないようなサインウェーブやサウンドオブジェクツ、チューブなどの“楽器”も含まれている。
生まれる音楽は、通常のドラムがあってベースがあって上音があってという構成からはみ出た音がたくさんある。
さまざまな要素が混じり合ってうまれている。
ONJOがオーケストラと名乗っている理由の一つはそこにあるのではと思う。
現在のロックやジャズのコンサートでは楽器の立ち位置に関係なく、音がステレオで聞こえてくる。会場のどこにいても、同じ音が聞こえるように環境を作ることが、正しいとされる。
音の塊がどっかとぶつかってくる感じがいいと。
でも、クラッシクのオーケストラがそうであるように、音が生まれる場所から私たちに届く、音の粒が注がれるような環境つくりをONJOは意図しているのではないかと思う。
つまり、会場にいた聴き手である私たちは、一人として同じ音楽を聴いていない。
それぞれが、音楽の輪郭を作っている。
複線的に起こっているメロディーかもしれないし、リズムかもしれないし、もっと違う音かもしれない。
きっと鼻歌を歌ってもらうといろんなのが聴けるのではないかなと思う。
今回13番目のメンバーとしてミックスをした近藤さんは、メンバーの立ち位置から音が出ているように感じられるように空間を作った。
宇波君のオブジェクトの音は上手から聞こえる。
Sachikoさんのサイン波は下手から聞こえる。
しかも、それらは立体的である。
500人がそれぞれの音楽を生み出して聴いてる。
ほんとうに自由であり、幸せなことだと思う。
出演者の皆様、
会場を提供していただいた同志社大学の皆様、
スタッフ、
そして聴くことに力を込めてくださった観客の皆様、
大きな感謝をいたします。
そして、今日は誕生日。
何度目かは申しませんが、
一足早いプレゼントをたくさんいただいたような12日と朝5時までの打ち上げでした。
御礼多謝。
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あ、Tさん誕生日だったんだ。おめでとう!
Tさんだけではなく、名古屋の企画をしてくれたSさん、ツアーのコーディネートをしてくれたNさん、ぼくらミュージシャンは、こうした何人もの人たちの“愛情ある仕事”ににささえられてます。多分彼らもぼくらの演奏にささえられているんだと思います。
なんだかこれ以上書くと情緒的な書き方になってしまうので、このくらいにしておきますが、でも、オレは、本来仕事というのは、こうやってなにかを他者とシェアすることなんじゃないかと思っています。その仕事の方法そのものが、オレ自身が考える政治であり経済であり、社会であり、思想なんだと思っています。
ところで、ここで、スタンディングと椅子席の問題がでてきていますが、これは僕等サイドでも要検討の課題。スタンディングの良さ、椅子席の良さ、双方あると思います。コンサートホールの京都と、満員のクラブの名古屋では当然演奏内容も音もかわります。音がかわることによって、演奏が変わる場合もあります。今回のONJOは、そのどちらにも対応出来る体制で臨みました。立つ、座る。音楽を生で聴くときの姿勢の違いは、聴く側はもちろん、演奏する側にとっても、とても重要な問題です。この2つは、単に音楽だけではなく、社会性にも関わる問題ですから。無論、どちらがいい、悪いではなく、両方の可能性があって、今後も、その両方、あるいはもっと別の可能性も視野にいれつつ、演奏する側のぼくらは与えられた条件の中で、フレキシブルに対応し、ベストつくしたいと思っています。そのためには、やはり、どうしても専属のサウンドマンがいないと厳しい。今回僕等の録音にいつも付き合ってくれている近藤昭祥さんに来てもらったのはそのためでもあります。
もうひとつ、音に関して言うと、今回の公演は、カヒミさんの声をカヒミさんの場所に返す以外は、ほとんどステージモニター(ステージ上のスピーカー)を使っていません。おそらく現在、これだけ大きな編成のバンドでステージモニターを使ってないバンドは、非常にめずらしいと思います。モニターをつかわなければ、当然音は聴こえにくくなります。遠くの音は遠くに、小さい音は大きな音に埋もれます。こんな当たり前のことが、ステージ上にモニターがあるだけで変わってしまいます。小さくて聴こえにくい音もはっきり聴くことが出来るし、自分の聴きたい音、たとえばリズムを取るためにベースだけはほしい場合、ベースだけを大きく聴くこともできます。80年代以降、全ての音楽で、非常にハイテクなアンサンブルが実現したのは、このモニターの進歩のおかげです。でも、ONJOでは、これをなるべくやめています。モニターがあることによって演奏はしやすくなるのですが、結局のところ、それによって、各演奏家が全体を見ながら自分の音をだしつつアンサンブルをつくるような、個人の音ではなく全体でひとつの有機的なアンサンブルになるような音は生まれにくくなる・・・これが私の持論です。無論完全にモニターをなくせといっているのではありません。使い方なんです。たとえばモニターどころかPAなんて無かった時代のジャズのビッグバンドのほうが、現在のどんなビッグバンドよりもアンサンブルしている・・・わたしはそう思っています。PAがあるのに、結局のところ、音が溶け合うようなアンサンブルは退化しているようにさえわたしには聴こえます。PAやモニターを無くせと言っているのではありません。昔に戻れといっているのでもありません。PAという機械(楽器といってもいい)の演奏方法をちゃんと考えなくては、今のアンサンブルは生まれない・・・そう思っています。これについては、書き出したらとまらない。考えれば考えるほど、実践すればするほど、奥深い問題がいろいろあって面白いのですが、ONJOが、もしもTさんが、書いているように、従来の楽器ではないものも飲み込みながら今までにないアンサンブルを作っているのだとしたら、この部分からの検証を現場でずっとしてきている成果だと思っています。で、さらにこの先に行くには、やはりサウンドマンの存在は絶対に必要だと、強く思った次第。
各公演のセットリストです。
●新宿PITINN 2月8日 ONJO
1st set
・HAT&BEARD
・Something Sweet Something Tender
・Gazzelloni
・柔らかい月
2nd set
・Climbers Hight Opning 〜Lost in the Rain
・闇打つ心臓
・Out to Lunch
・Straight Up and Down
+真夜中の静かな黒い川の上に浮かび上がる白い百合の花
Encore
・EUREKA 〜 Climbers High Ending
●新宿PITINN 2月9日 昼 ONJO SLOS
1st set
大友良英ソロ、津上研太ソロ、 Sachiko Mソロ、青木タイセイ ソロ
2nd set
大友良英ソロ、宇波拓ソロ、石川高ソロ、大蔵雅彦ソロ、アルフレッド・ハルトソロ
●新宿PITINN 2月9日 ONJO+Strings
1st set ONJO単独
・Out to Lunch
・Climbers Hight Opning 〜Lost in the Rain
・Hat And Beard
・Gazzelloni
2nd set ONJO+新宿2丁目ストリングス
・Something Sweet, Something Tender
・Double Command 1(イトケン/ストリングス指揮 大友/ONJO指揮)
・Double Command 2(大友/ストリングス指揮 イトケン/ONJO指揮)
・Single Command 3(大友指揮)
・柔らかい月
・Stright Up And Down
+ 真夜中の静かな黒い川の上に浮かび上がる白い百合の花
Encore
・EUREKA 〜 Climbers High Ending
●名古屋「得三」2月11日、京都公演「同志社大学 寒梅館ハーディーホール」2月12日
・Out To Lunch
・Hat And Beard
・Lost In The Rain
・Climbers Hight Opning
・Something Sweet, Something Tender
・Gazzelloni
・柔らかい月
・Stright Up And Down
+ 真夜中の静かな黒い川の上に浮かび上がる白い百合の花
Encore
・EUREKA 〜 Climbers High Ending
出演メンバー
『ONJO』
大友良英(G、指揮) カヒミ・カリィ(Vo) アルフレート・ハルト(Ts,B-cl) 津上研太(As,Ss) 大蔵雅彦(As,B-cl, Tubes) 青木タイセイ(Tb) 石川高(笙) Sachiko M(Sine waves) 宇波 拓(Comp&オブジェクツ) 高良久美子(Vib) 水谷浩章(B) 芳垣安洋(Ds,Tp) 近藤祥昭(sound,名古屋、京都のみ) 江崎将史(tp 京都のみ)
『新宿2丁目ストリングアンサンブル』
イトケン(指揮) 小龍てっこ violin 千葉 広樹 violin 竹田和也 violin 塚田悠斗 violin 橋本修一 violin 成井幹子 viola 向山聡孝 viola 公文忠信 cello 智紗都 oboe
『京都公演、オープニングアクト』
POPO(江崎将史tp 山本信記tp 喜多村朋太org)