カエルと人間

otomojamjam2006-06-24

きのうは京都法然院での完全アコースティックライブ。
sonar山本精一、わたしの3人がそれぞれアコースティックギターでソロ(sonarはもちろん歌も)ののち、3人での共演。



で、なにがすごかったって
どのセットも主役はモリアオガエルだったこと。


背景音とか自然の音との共存みたいなロマンチックなハナシでは全然なくて、(そもそもそんな意図は、こちらには最初からないのだが)最初の驚きは、カエル集団の声が、あまりにもいやになるくらい高度に音楽的だったことだけど、それはまあ、想像もついていたし、すごいな〜と感心しつつも想定内。


で、想定外の驚きは、カエルの集団が、こちらの演奏を間違いなく聴いていて、なんらかのシステムではっきりと反応しくること。ある程度はあるだろう・・・くらいにはおもっていたけど、それがまるで、だれか裏でテープ演奏してるんじゃないのというくらい音楽的な反応に聴こえてしまう・・・というのはほとんど予想していなかった。もちろんテープの仕込みなんてしてない。カエルにも、ギャラをはらってないし、リハをしたわけではないので、向こうにこちらとの共演の意思(のようなもの)があったわけではない(と思う)。
多分彼等の身体と集団のシステムのどこかに、僕等3人の出す音の何かがふれて、それで、人間の側からみたらまるで共演をしているかのような、音楽であるかのような感じを受けただけにすぎない(と思う)。


わたしの前に演奏した山本精一が「Bの音に反応してる」って言うのを鵜呑みにして、でもって、その前に演奏したsonarの声の持続音にも反応しているようにも思えたので(あ、彼女の歌や演奏は本当に素晴らしかった)、わたしはためしに最初にBの持続音を出してみたら、面白いように反応してくる。で、さらにその音を突然止めてみたらカエルの声もぴたりととまる。3度同じことしたけど、3度とも止まるから、偶然ではなくて、やっぱりこちらの出す音に反応しているとしか思えない。ほかでも細部でこまかい反応がたくさんあった。


でも、カエルと反応してライブをやるのが今回の目的では全然ない。(最初の目的はモリアオガエルの産卵風景を見ながら演奏できたらいいな・・・という、モリアオガエルファンの山本精一のアイディアからきている)だから、演奏の主眼をカエルとの反応においていたわけではない。要は法然院の独特の空間と響きのなかで、3人それぞれなにが出来るかということだったのだけど、やはりあそこまで声が大きい上に、はっきりとこちらにとって音楽と認識してしまうような領域の音をだされると、人間の側も無関係ではいられなくなる。



やってるオレはまるで、もう猫とかと遊んでいるときに近い感覚にもなっていた。でも、ふと思ったのだけど、これって、人間と共演しているときと、いったい何が違うのだろう。最後に3人で、それもみながかなりの距離を置いて小さい音で、ほとんど間だらけの演奏をしたときに、その確信はさらに強くなった。たぶん、根本的な部分では人間と即興演奏をするときと、カエルと即興演奏をするときと、なにも違わない。




法然院の周辺は源氏蛍でも有名な場所で、帰りに初めて発光する源氏蛍を見た。(小型の平家蛍なら何度かみたことがある)蛍の発光にはテンポがあって、蛍はあるテンポの光の点滅に反応する。ときに車の方向指示器の点滅に反応して大量の蛍が発光しだすこともある。これって要は、機械が作った光の点滅を異性からのサインと勘違いして発情しているってことだと思うのだが、もしかしたら僕等のやっている演奏もそういうことなのかもしれない。カエルが僕等の音をなにかのサインと勘違いしてあ(多分)発情し声を発したように、僕等も、カエルの声を音楽のように聴いてしまう。そして反応してしまう。



唯一人間と共演しているときとの違いがあったとすると、それは、私自身がいつもよりずっと自由になれたことだ。きっと人間と共演しているときには、相手の音楽観とかを考えたり・・・みたいな様々な邪念が入るからかもしれない。カエル相手なら、そんなことを考える必要も理由もないってことなのかもしれない。


いずれにしろ、共演とか、あるいはコンサートなんかで演奏したり聴いたりする・・・という営みみたいなものも、もしかしあたら、蛍と方向指示器、モリアオガエルと僕等の関係のように相互に誤解しているだけかもしれない。あ、方向指示器は発信するだけで、誤解はしなか。






打ち上げは、いまや予約がほとんどとれなくなってしまった吉田屋料理店で。で、ここでもカエルと対話を。といってもこちらのカエルは、今日これからShin-biで鼎談をする相手の一人のカエルさんこと細馬宏通さんと。彼は動物行動学の専門家でもあるので、モリアオガエルの生態についての講義をしてもらった。むこうのテーブルには山本精一、レイハラカミ、竹村ノブカズの京都在住の3巨頭がず〜〜〜と深そうなそうでもなさそうなハナシを。この3人が一緒にハナシをしてる図、まるでなにかのサミットのよう。