あらたなENSEMBLES  PITINN3デイズ

otomojamjam2009-04-17

さきほど中国・FEN、Filamentツアーより無事帰国しました。
いや〜、10年ぶりの中国はほんと面白かった。あまりにも面白くて、ついでに空気が驚くほどきたなくて、その両方で頭がぼ〜〜っとしております。書きいたいことは山のようにありますが、その間止まっていた仕事をこなさねばなので、報告は後日。


で、まずは大至急報告しなくてはならないのは18日土曜日からはじまる新宿PITINNの3デイズについて。


そもそもこの企画は、今年の夏にやるつもりの『ENSEMBLES展2』の出発点をPITINNのライブからはじめたいなあ・・・というところからはじまりました。昨夏に山口のYCAMでやった『ENSEMBLES展』を、裸一貫で、どう東京にもってくるか。今年のわたしの大きなテーマは、アンサンブルズをゲリラ的に地元で展開するぞ・・・でして、だったら、自分自身のホームグラウンドたる新宿PITINNのライブからなにかはじめるべきだろう・・・そう思ったのがこの企画のはじまりです。


80年代の駆け出しの頃から、50歳にならんとする今に至るまで、新宿PITINNは常に活動の中心ともいえる場所でした。それどころか70年代のガキの時分から、東京に出てくる毎にここで数え切れないくらいの素晴らしいライブ見て育ってきたわけで、PITINNに育ててもらった・・・と言っても過言ではないでしょう。そのくらいPITINNにはお世話になってきました。
ただし、やはりPITINNはジャズの現場、良くも悪くもここで出来ることと出来ないこと、みたいなものがどうしてもあって、わたしにしてみても、ここでONJOは出来るし、ぎりぎりJoy Heightsあたりまでは出来るけど、じゃあ、Filamentは出来るだろうか、幽閉者やFENのライブは・・・ってなると、自分自身でもなんとなく出来る、出来ないのボーダーを決めていたような気がするのです。
もちろんPITINNのサウンドシステムの向き不向きや、ここに来るお客さんの層のこととかを考えての選択でそうしてきたわけで、それは別に間違っていることだとは思っていません。でも、アンサンブルズをここからはじめようって思った瞬間、少しだけ、いたずらをしたくなりました。
PITINNという枠にとらわれずに、一番やりたいことをやる・・・ってのと同時に、あえてPITINNという枠があるからこそ、その枠には収まらないものをやってみたら面白いのでは・・・という興味がふつふつとわいてきてしまったのです。



この世でわたしが一番好きなノイズユニット、インキャパシタンツがPITINNに出たら、いったいどんなことになるんだろう。
およそPITINNとは縁のなさそうな梅田哲也や毛利悠子といった若手精鋭の美術とも音楽ともつかない活動をしてる連中だったらPITINNをどういう空間に解釈するんだろう。
いつもライブを見に来てくれる飴屋法水さんが、PITINNという場で吉増剛造さんやわたしと即興したらいったいどんなことになるんだろう。そんな演奏のあとに、PITINNではおなじみの芳垣安洋水谷浩章と即興演奏をしたら自分自身どういう演奏になるんだろう。



最初の2日間は、大友、水谷、芳垣トリオ以外はPITINNでは普段は到底ありえないセット、かつ、PITINNという場でやることが、まったく想像できない、いったいどうなるのかかなりの不安もあるセットばかりを考えました。別に奇をてらったわけではありません。自分自身がうきうきするくらいPITINNという場で本当に見てみたい、聴いてみたいという強い興味が原動力です。あのインキャパシタンツがPITINNで大暴れするなんて、想像しただけで、ココロが踊るじゃありませんか。


最終日の20日月曜は、今自分自身で一番やってみたい即興のセットです。昨年12月に、吉祥寺のCafe Dzumiでやったジム・オルークSachiko MのDUOがあまりにもよくて、それから、昨年、横浜トリエンナーレのオープニングパーティでこの2人にカヒミさんとわたしが入ってやった即興演奏が、やはり、非常によくて、なのにこのときは、会場や主催が最悪で、せっかく聞きにきてくれたお客さんがちゃんと聴けるような環境にはなく(もう二度と美術のやつらのやるオープニングパーティでは演奏しないぞ)、なのでそのリベンジをぜひしたいなというのもあっての最終日です。この3人、ないし4人のセットは、従来のPITINN向きのものではなかもしれません。でもそんな枠をつくっていたのは他でもないわたし自身です。まずはそこから変えなくては。
それからもうひとつ、最終日のこの4人にセットは、実は昨年のENSEMBLES展の中の作品「Quantets」のライブバージョンでもあることを追記しておきます。



3日間全セットとも事前とりきめなしの即興です。わたし自身も現時点ですら、どうなるかの予想はまったくつきません。すごいことがおこるかもしれないし、最悪の結果だってあるかもしれません(PITINN側が怒って演奏中止になるとか・・・)。
単に音楽的な理由だけではなく、「場」や、参加者とPITINNとのいろいろな意味での距離、それぞれの参加者のもつさまざまなバックグラウンド(歴史)、前後のセットとの関係、即興する者の人数、お客さんの反応・・・そういった様々なファクターが絡み合う中で、どんなことが起こるのか。この興味こそがわたしがアンサンブルズをはじめた原動力そのものです。


そんなわけで、アンサンブルズ展の第一歩は、自分自身にとって一番身近なホームグラウンドの意味から変えていく・・・です。PITINNを変えるとか、叩き壊すとか、そういう威勢のいいことではなく、自分の依って立つ日常から仕切りなおす。そんな意気込みです。



今年のアンサンブルズ展「休符だらけの音楽装置」は、そんなわけで、わたしのホームグラウンド新宿PITINNから始まります。この3日間に今年のアンサンブルズ展の現時点できまってる情報も公開する予定です。どうかお楽しみに。


新宿PITINN
大友良英 3 DAYS "5つのトリオ":ENSEMBLES 2(休符だらけの音楽装置)開催予告イヴェント』
前売:3,000円、当日:3,500円、三日間通し券(ピットインでのみ取り扱い):8,000円


4月18日(土)7時30分開場、8時開演
トリオ1:大友良英 + 梅田哲也 + 毛利悠子(楽器名表記不能
トリオ2:インキャパシタンツ(美川俊治 + 小堺文雄 )+ 大友良英



4月19日(日)7時30分開場、8時開演
トリオ3:大友良英(p、electronics、パフォーマンス)+ 吉増剛造(朗読、パフォーマンス)+ 飴屋法水(パフォーマンス)
トリオ4:大友良英トリオ:大友良英(g)+ 水谷浩章(b)+ 芳垣安洋(ds)



4月20日(月)7時30分開場、8時開演
トリオ5:大友良英(g, electronics, TT)+ ジム・オルーク(g, p, electronics)+ Sachiko M(sinewaves)
クアルテット 大友良英 + ジム・オルーク+ Sachiko M + カヒミ・カリィ(vo,perc)



問い合わせ 新宿PITINN TEL:03-3354-2024
http://www.pit-inn.com/


昨年のYCAM ENSEMBLES展から


インキャパシタンツ