音楽がご立派である必要なんてない

otomojamjam2009-07-10

phewbikkeが新録のカセットをリリースした。これがあまりに素晴らしくて・・・・。超ヘビーローテーション




「音楽は無力だからこそ美しい。それがどんなに過激な音でも武器みたいに人を殺せないからこそ美しい。パンクが駄目だったからこそ美しかったように。音楽がご立派である必要なんてない。」


これ、今から8年前、2001年7月号のスタジオ・ボイスレヴォリューション・ポップ〜音楽による政治解放宣言!」の特集のときの巻頭に書いた文章の抜粋。全文は↓ここで読めます。
http://www.japanimprov.com/yotomo/yotomoj/essays/studiovoice307.html


イルコモンズさんのブログを読んで、久々にこの文章のこと思い出しました。
で、今回のESEMBLES展「休符だらけの音楽装置」はそのこととちゃんと繋がっているんだなって。
最近「教訓?」をカバーしたりして歌をうたいだしたのも、without records展も自分の中ではちゃんと繋がっているのだ。


この文章が出たスタジオボイスが9月号で休刊になる。さすがにこれはショック。長年愛読してきた、かつ、わたしの情報が出る数少ない雑誌がなくなるショックもあるけど(あ、今でてる8月号にも4ページでwithout recordsの準備中の特集でてます)、それ以上にショックなのは、実は密かに松村編集長に期待していたからなのだ。彼が編集長になった今年の正月、オレはついつい「ボイスも落ちるとこまで落ちたね」なんて編集長本人に戯言というか、まあ励ましの意味も込めて、ひどいことを言ってしまったんだけど(編集長ごめん)、本当は古くから知ってる松村編集長のセンスと手腕にものすごく期待していたのだ。だって、これまでも彼の担当する記事が一番面白かったし、なにより湯浅湾の現役ベーシストが編集長って、最高じゃないですか。事実彼が編集長になってからのボイスは、松本弦人のデザインとともに、強烈にはじけていた。おおおお、きたぞ、来たぞ・・・・って感じで。
ボイスがなくなるのは無論彼のせいなどではない。広告の問題とか大人の事情がそこにはいろいろあるんだと思うし、一番は20世紀のような雑誌の時代ではなくなってきてる・・・ということなのだと思う。



なんでphewbikkeがカセットを、この時期にわざわざ出したのか、ふたりと同じ歳のオレには、そのこと、ものすごくわかるような気がするのだ。もちろんノスタルジックなどではない。そんなヤワな感性など僕らは持ち合わせちゃいない。カセットのほうが音がいい・・・とよく言われるけど、事実いいし、その音は大好きだけど、でもそれも根本的な理由じゃない。


phewは最近ライブを再開してる。しかも渋谷だか新宿の路上で歌っているらしい。




昨年YCAMでwithout recordsをやっときに、遠くて見にいけない・・・と、本当にたくさんの人から言われました。もちろん山口は東京からみたら本当に遠い。いくの大変です。でもその前に仙台でやったときも同じことを言われました。まあ、仙台も山口ほどじゃないけど遠い。でも、今やってる原宿だって、九州に住んでる人からみたらものすごく遠い。
山口でやったwithout recordsはyoutubeにアップされてます。youtubeバージョンもとってもかわいくて気に入ってます。でも、山口までたくさんの時間とお金をかけて見に行った人の経験とyoutubeの経験とは根本的に違うものだとわたしは思います。



みんが同じものを享受する必要なんてあるんだろうか?
同じ会場で何万人もの人がおんなじ音楽を同じような音で聴く必要なんてあるんだろうか。
何十万人、何百万人もの人がiPodで直接鼓膜を振動させて、まったく同じ音の音楽を聴く必要なんてあるんだろうか。
データ化された音楽だけでいいのだろうか。



ボイスがなくなるってことは、きっと松村編集長は、次になにか違うことをやりだすぞ・・・ということでもあるのだ。そのことが楽しみ。



いまどきハードを持ってる人が少ないカセットを数百本作って売る。
その場にいかなければ絶対に体験できない不自由きわまりないインスタレーションを作る。





明日はハンガリー国境近くのオーストリアの田舎町ニッケルスドルフで20年以上の続いているフェスで演奏する。初めてこのフェスに出たのは15年ほど前。そのときには鉄格子と厳しいパスポートコントロールのある国境はまだ厳然とあって、向こう側にいくにはヴィザが必要だった。今は、このフェスに出演するミュージシャンは全員、車で20分ほどのハンガリーにあるホテルに泊まっている。国境にあったパスポートコントロールは廃墟のようになっていて、もちろん警備兵もいない。隣町にいくのとまったく変わらない。



この廃墟にほこりをかぶったホーンスピーカーが残っていた。かつては、きっと国境を越えようとした人に警告を流すためにつかわれたものだろう。ふと、ここからphewbikkeのカセットを流したい衝動にかられる。