ベニス

otomojamjam2005-05-19

朝9時にホテルを出て3時にベニスに到着。いつもながらベニスはまるで別世界のおとぎの世界。車を完全に遮断した旧市内の足音と人の声だけのサウンドスケープは本当に独特。ここにくるといつも25年前に初めていった海外、当時まだ外国人がほとんどはいっていなかった中国の海南島の夜の町の音を思い出す。
とはいえ、今回はほとんど観光する間もなく水上タクシーにのってさっさと会場へ。6年前ONJQの初ツアーでいったのと同じ海沿いの倉庫を改造したなつかしい会場。世界広しといえど、ボートにのって会場に行くのはここくらい。
サウンドチェックのあとは、もう、この世のものとはおもえないくらいの美味いレストランで海の幸と、パスタにリゾット、もう食えないってくらい食ったのに、ドルチェのマスカルポーネのあまりの美味さに、食欲の扉は全開。満腹のまま、再び会場へ。

今日も沢山のお客さんがつめかけてくれた。セットリストは昨日とおなじ。イタリアではめずらしく、ここのお客さんは静かに聴いてくれる。高良久美子Sachiko Mの静謐なDUOからはじまるカヒミさんとの共作「Lost in the Rain」が素晴らしい音響で響く。いつもは情景をほとんど思い浮かべることなく曲をつくるのだがこの曲は特別。いつも雨の風景が通り過ぎていく。今日みたいに響いてくれると本当に幸せな気分。ピンと空気のはりつめた素晴らしい演奏。

演奏終了後、日本語を上手に話すカップルに声をかけられる。6年前のONJQのコンサートのときに2人は別々に楽屋につめかけて、そこではじめて知り合ったらしい。
「え、それじゃ僕等キューピットじゃないですか」
「はい、おかげさまで。今日はその記念にサインをください」
この6年間、僕等にもいろいろあったように、彼等にもいろいろあったっだろうなあ。皆で彼等の幸せそうな写真にサインをする。末永くお幸せに。

「あしたのコンサート、キャンセルしてここにもう一泊しようよ、ね、エーハード」
ホテルへの帰路、夜のイルミネーションに照らされた水路を走るボートの中でツアーマネージャーのエーハードに皆で駄々をこねる。そのくらい今日の僕等は幸せな気分。


明日は朝6時半の列車に乗って8時間かけてオーストリアのウェルスへ。ここはONJQの欧州公演デビューの地。主催者のウォルフガングは、海の者とも山のものともつかぬ僕等に莫大な金を出して6年前に呼んでくれたのだ。彼には今の僕等もぜひ見て欲しい。ベニスの誘惑を振っても行かなくてはならないのだ。