久々に頭にきた! でもいいライブでした〜

会場につくなり、なぜか沢山マイクが立っていて「ん? 録音?」とか思ったのだけど、とにかくPAからなかなか音が出てくれなくて、いらいらしていて、すっかりそのことを忘れていた。で、本番直前になって、なんと裏に「ラジオ・グダニスク」と大きく書いたバスが止まっていて、会場からコードがそのバスの中に入っているのに気づく。不信に思って、ドアをノックして中に入ってみると、本格的な録音車じゃないですか。これって? まったくラジオの録音なんてはなしは聞いていない。現に僕等の前に演奏しているグループの音を、こいつらは無断で録音している。
「今日演奏する大友ですけど、あなたたちはここでなにをやってるんですか?」
「ドキュメントとしての録音です」
「ドキュメントって?」
「いや、ただ記録しているだけですから、問題ないです」
「問題ないって、どういう意味? え? 問題あるかないかは、あんたじゃなくて、オレが決めることだろ」
「いや、だから放送するわけではないですから、ただの記録です」
「ただの記録のために、こんな大きな録音車を出して、何人ものスタッフが働いてるわけ? 放送するためじゃないの」
「いや、すぐには放送しませんから」
「すぐにはってどういう意味だよ。いったい誰の許可とって録音してんだよ」
明らかに彼等はウソをついていて、ごまかそうとしている。
「今すぐに録音を中止して、この車を撤去しろよ」
「いや、だから放送したりしませんから」
「放送しないなら録音しなくてもいいだろが・・・」
あとはカッとなって気づいたら椅子を車に向けて投げつけていた。連日の移動とライブで、体力の限界を超えている上に、精神力のほうもリミットを越えてしまったみたいだ。かっかしてるオレに落ち着くよう諭してくれたのは、アルフレッドだった。サンキュウ、アルフレッド。すぐに主催者を呼び出して、録音車の撤去をお願いした。車が完全に敷地を出るまでは、僕等は演奏しないことにした。当然のことだけど、なんの許可もなく録音するのは法律違反以前の話だ。無論会場の隠し録りまで、ぼくらは文句をいったりしない。でもここまで堂々と無許可でしかも公営の放送局がウソまでついて、タダで録り逃げするなんてもってのほかだ。アルフレッドをはじめ、ポーランドからは、結構な数の海賊版が出ていて、その多くはラジオ局がかんでいるって話は昔から有名だ。なにがいやだって、まるで正規盤のような顔をして、こっちが関与してない勝手にミックスされた音源が出るのは耐えられない。わたしは基本的には将来、著作権はなるべくフリーに近い方向にいくべきだと思っているけれど、著作権のフリーと、無許可の録音とはまったく別の話だ。これは完全なる窃盗だ。無論事前にこちらに許可を得ての録音ならともかく、まったく知らさせもせずに、こちらが気づくまで、なにも言ってもこないというのは論外だ。
車は30分ほどで退去。僕等は全員カリカリしながらステージへ。でもこんなときに限っていい演奏をするんだよね〜。今日の演奏は本当に素晴らしかった。カヒミさんの声がすっかりバンドの中に溶けて、今日のアンサンブルは本当に美しかった。終わったあとも皆満足気。
今日僕等の前に演奏した我が朋友、ウィーンの最高にいかしたギタリスト、ブーカルト・スタングルが楽屋にきて「バラードが素晴らしかった。激しい曲は、いまいちで感激しなかったけど、バラードは本当に今まで聴いたことのないオーケストレーションで本当に感動したよ〜」と褒めてんだか、けなしてるんだかわからない褒め言葉。彼は高良さんに向かって「あなたのバイブラフォンは本当に美しい。もうオレは今後バイブをひくの引退する」なんて言ってやがる。まったく調子いいんだから。彼は素晴らしいバイブラフォン奏者でもある。
「おいおい、じゃオレのギター聴いて、ギターもやめたくなったでしょ」
「No No No、んなわけねえだろ」だって、ちくしょ〜(泣笑
同じく今日演奏したポーランドの友人ロバートとアナの2人も含め、皆でワインを飲みながら楽屋でしばしもりあがる。

こんなにいい演奏が出来るなら演奏前に毎回怒ったほうがいいのかなあ(苦笑



明日はワルシャワでFilament。対バンは今日一緒だったブーカルト、ロバート、アナの3人。皆さすがに連日の移動で体力の限界を超えていて、睡眠不足と疲労の上に、頭痛や風邪、咳、便秘、腰痛等々、そんなわけで、明日は数時間の移動のあとはマーチンが気をきかせて日本料理屋につれていってくれることに。ワルシャワ滞在は2泊3日。少しは休める。