もうひとつの韓国

otomojamjam2005-09-05

あさっては下北沢 アレイホールで、朴在千(percussion)+美妍(piano)+大友良英(g・turntable) というライブがあります。

パーカッションの即興ということで言えば、今や世界のレベルで語っても決して大袈裟ではない朴在千さん・・・って書いてもよほどのディープな音楽ファンでもないかぎり、どう読んでいいかわからないですよね。朴在千はパク・ジェチュン。美妍はミヨンです。
パクさんとの付き合いは、たしか98年か99年くらいからかな。韓国即興界の重鎮というか、そもそも、そんなシーンの存在しなかったソウルで独自の即興演奏を70年代にはじめたサックスのカン・テーファンのコンサートを東京の小さなライブハウスに見に行ったときでした。そこで一緒に演奏していたのがパーカッションのパクさんです。あまりにも素晴らしくて、感動して、その場で声をかけました。あのときお客さん20人もいなかったんじゃないかな。こんなものすごい音楽なのにって思ったの覚えています。その素晴らしさは、あえて例えるなら富樫雅彦なんかの音色や演奏のレベルに例えられるような、アコースティックの楽器による本格的な即興演奏の素晴らしさです。しかもそれはフリージャズでも、欧州の即興でもなく、本当に独自のものでした。
幸いパクさんはわたしの音楽にすでに相当の興味を持っていてくれて、その後は日本やソウルで何度も共演しました。音楽に対して、おどろくほど真面目かつストイックなパクさんと、かたことの英語同士で何時間も議論を戦わせたこともあります。いや、彼実に頑固なんですよ。でも人の意見をびっくりするくらい真摯に聞いて考えるんです。実は今月末にわたしが呼ぶソウルの新しい世代のノイズメーカー達と、わたしと同世代のパクさんなんかの、ある種正当な楽器演奏を基本にした即興演奏家との間に、微妙な齟齬があるのも事実です(決してケンカをしているわけではなくね)。その齟齬の中でも、パクさんはそのことを真剣に悩み考えています。だから彼のことを信頼できるし、好きなんです。
今ソウルでは、わたしが呼ぶ、楽器をほとんど使わない若いノイズメーカー達と、パクさんたちと、まったく異なる即興音楽のシーンが不可思議なバランスで存在しています。もしもアジアの新しい音楽の動向に興味のあるかたは、その両方を見ることをお勧めします。パクさんの、地べたに腰をおろしながら叩くあの独特のスタイルと豊穣な音色を聴くだけでも価値あると思います。
2人との共演は多分3年ぶりかな。日本で3人でやるのははじめてじゃなかったかな。あさっては台風になっちゃうかもしれませんが、でも嵐の夜に相応しい即興演奏をします。

9月7日
朴在千(percussion)+美妍(piano)+大友良英(g・turntable)
場所:下北沢 アレイホール open 19:00 / start 19:30 \3,300(終演後ワイン・フーズ・パーティ\1,000)
予約問合せ:アレイホール / 03-3468-1086   alleyhall@mbg.nifty.com    http://www.geocities.jp/go4block/KTH.html



パクさんミヨンさん、そしてわたしのソウル録音の共演アルバム「loos comunity」についてはここで→http://www.japanimprov.com/imjlabel/511/index-j.html
パクさん、ミヨンさん、カン・テーファンさんそれぞれのロングインタビューをした様子は雑誌「improvised music from japan2004」に紹介されています。→http://www.japanimprov.com/imjlabel/304-5/index.html  


あ、ところで、ここのところ「アジア」という言い方をあえて暫定的に頻繁に使っていますが、この言葉を使うとき、なにか割り切れないものを感じながら使っています。それは、この言葉に対する自分の立ち位置の居心地の悪さとともに、欧州、アジア・・・というような概念のいい加減さ、傲慢さ、あやうさ、みたなものが、刺のように心にひっかりつづけているからです。それでも、使っているのは、ほかにシンプルに言えるいい表現がないということよりも、この刺の現実をごまかさずにいたほうがいいかなと思うからというのもあります。いずれにしろ、居心地がよろしくない。北海道弁でいうと、アズマしくない。