今NYは大晦日の8時半

otomojamjam2005-12-31

日本の皆さん  


あけましておめでとうございます。




JamJam日記を始めて丸8年、ブログに移行して1年目、ご愛読ありがとうございました。2006年もよろしく。




ここNYはまだ12月31日の夜8時半、カウントダウンまであと数時間の大晦日です。







12月25日からはじまったストーンでの大友フェスは昨夜無事終了しました。おかげさまでラストに向けてどんどん入場者は増え連日ソウルドアウト。もってきたCD70枚も完売、本当にありがとうございました。



29日8時の回は当年70歳、NY在住30年のエレクトロニクスの大巨匠の刀根康尚さんの暴走するCDプレイヤーと、わたしのターンテーブルによるDUO。もちろん初共演。高速で暴走しつづける1時間でした。


10時の回はPortable Orchestra、メンバーは、大友良英、 Jeremiah Cymerman, James Ilgenfritz, Chris Hoffman, Tim Keiper, Bob Vaccarelli, Dalius Naujokaitis, James Dellatacoma, Matthew Welch, Mike Pride, Fritz Welch, Matt Mottel, Sawakoの13名。いずれもNYで活動する20代の若手精鋭の即興演奏家たちです。50分間、13名もいるにもかかわらず、非常に音の少ない世界。
ポータブルオーケストラをはじめてやったのは数年間、代々木のオフサイトでのことでした。もともとはほとんど音量の出せないオフサイトという特殊な場所を考慮して作った作品だったこともあって、当時は、こんなタイプの音楽をオフサイト以外の場所でやることなんてまったく考えてもいませんでした。でも、わずか数年で、ONKYOという言葉とともに、こういう音楽を積極的に聴いてくれる人たちが、世界中(というと大袈裟かもですが、すくなくと欧米や東アジア地区)に現れて、ここストーンでも28日の静かな即興演奏同様、ぎゅうぎゅうの満員のお客さんがものすごい集中力で聴いてくれて、ほんとうに嬉しい限り。
演奏が終わって一番に飛んでやってきたのは刀根さん。
「大友さん、これ、フェルドマンなんかより全然いいねぇ。君は外の音を排除してないでしょ。そこがいい!」
これ、言いすぎだけど、でも嬉しいなあ。
ついでやってきた、多分ティーンの小柄なアフロアメリカン系の青年が矢継ぎ早に沢山の質問、
「もしかして、演奏されている音と、外から聞こえてくる車や人のざわめいている音の関係が写真のポジネガみたいに反転することも考えて、この作品をつくっているの?」
等々・・・・で、質問に答えたあとに
「なんだかわかるような気もする。でも、こんなへんなコンサートを見たのは、生まれて初めてだよ。しかもただ変なだけじゃなくて、もう突出して変わってる。すごい体験したよ・・・・」
これも嬉しい反応。
ほかにもいくつかいろいろな感想をみなが言ってきてくれる。こんなところは、控えめでさっとかえってしまうことの多かったシャイなオフサイトのお客さんとはちょっと違う所だけど、僕個人はオフサイトがなくなった2005年の4月にNYでストーンができたというのは、多少の縁もあるだろうと勝手に思っていて、ここでポータブルオーケストラをやったのは、そういった意味も多少はこめていたりするのです。
代々木のビル音や周辺住民の生活音、車の音が聴こえてきたオフサイトと異なり、ここでは、ハウストンストリートの車の音や、始終行きかうパトカーのサイレン音、ロワーイースト、ダウンタウン周辺の人々の喧騒が聴こえてきて、ものすごく面白い音場だった。演奏を終わったあと、こんなスペース東京にもほしいなあ・・・じゃなくて、自分で作るか・・・ってちょっと思いだしてしまった。危険、危険(苦笑。でもやりてえなあ。


この日はそのあとは刀根さん、そして今回わたしのドキュメント映像をとりにNYまできている岩井主税くんと3人でダウンタウンにある日本の居酒屋へ。主税くんは1年前から、ほぼ密着して映像をとりつづけていて、今回も全公演が彼のDVDの中に納まっている。刀根さんとゆっくり話すのは4年ぶり。ここにはとても書けない様な抱腹絶倒の話をさんまの塩焼きやら、たこ焼きなんかをつまみながら深夜まで。刀根さん、また機会がありましたら、よろしくお願いします。





で最終日30日。8時からはイクエモリさんとDUO。10時からはここにターンテーブルのトシオカジワラもはいって3人で。別に狙ったわけではないけれど、昨日の刀根さんといい長くNYに住み活動しているエレクトロニクを使った日本人の演奏家たちとの共演になった。イクエさんとは今年にはいってから何度か共演したりレコーディングしたり頻繁に行き来をしているのですが、今日の演奏は、そのいずれとも違う感じで、新しいことができたんじゃないかな。
トシオくんとの共演は7〜8年ぶり。前回はNYのクーラーというクラブで、クリスチャン・マークレーなんかと一緒だったけど、そのときとは別人のような演奏でびっくり。彼はこの何年かトニックの地下で毎週「サブトニック」のタイトルで、いわゆるダウンタウンシーンと呼ばれるNYの即興とは異なる、そういうものに収まらない音楽を中心にした柔軟な企画をやってきていた中心人物で、その演奏も、非常にユニーク。音のテクスチャーを重視した感じの演奏は、オフサイトなんかで行われていた音楽とも共通するけれど、でもそれだけではない何かもあって、面白かったなあ。彼はオレのことを「オオトモくん」と呼んでくれて、そういうところも好きなところ。トシオくん、これからもよろしくね。


会場には最終日ということもあって、いろいろな、ここには書ききれないくらいいろいろな人がきてくれて、おまけに入れなかった人も沢山いたみたいで・・・。今回はストーンを運営しているボランティアの若いひとたち、機材を貸してくれた本田ユカさん、加藤英樹さん、ジャイコさん、トシオさん、新しい演奏家を紹介してくれたジョン・アービーや座間裕子さん・・・・、でもって、なにより、こういう機会を作ってくれたジョン・ゾーンをはじめみんなに世話になって、NYのみなさん、本当に感謝しています。
どうもありがとう。





ずっと暖かな年末でしたが、大晦日の今日は雪。NYらしくなってきた。





みなさん、よいお年を。
Happy New Year!








1月1日はトニックで10時から
Painkiller vs. Method of Defiance With John Zorn (alto sax), Mike Patton , Bill Laswell (bass), DJ Submerged (turntables) & Guy Licata (drums) 大友良英(g),中村達也(ds)
というセットがあります。お時間あるかたはぜひ。