知的障害児とのワークショップ1回目

otomojamjam2006-01-09

昨年、何度か見学に行って、ここにもさんざん感想やら文句を書いた神戸大学知的障害者とのワークショップ、いよいよ今度は自分がやる番。
で、
わきで見て文句を言うのと、実際にやるのとではえらい違いでした。これは予想以上に大変。毎日書いていた日記がすぐにアップできないくらい打ちのめされた。


なにに打ちのめされたかを書く前に、ちょっとびっくりしたことを。
実は今日はゲストの自己紹介もかねて、わたし、江崎将史、林加奈、森本アリの4人それぞれがソロの演奏をした。わたしはまずはエレクトリックギターソロで、わたしが最初に作曲した映画音楽の「青い凧」を演奏。結構大きな音だったけど、みなみみをふさいだりしながらも集中して聴いてくれた。で、つぎにポータブルのターンテーブル3台でソノシートを使って演奏しだしたら、1分もしないまに、男の子数名がターンテーブルの前にやってきて、みなどんどん演奏しだしたのだ。最後には完全にテーンテーブルは男の子達数名に占拠されてしまった。演奏ジャックされたのはうまれて初めて。でも、これはすごい楽しかった。
あ、こういうの好きなんだ、あいつら。
ターンテーブルは沢山もってるから次回は沢山もってきて遊んでもらおう。


ま、こんな感じで自己紹介はとっても楽しくやれたのだけど、さて、問題はワークショップがはじまってから。途中、みんな集中力がとぎれてしまって、なんとなく散漫な感じになってしまったのだ。もちろんすごい面白いことも沢山おこったけど、う〜〜ん、十分にできたとはいえないなあ。アリくんや、加奈さんは子供をちゃんとひっぱっていって頼もしいかぎり。江崎くんも、すでに子供を充分に受け入れて彼の世界をつくってしまっていて感心しました。問題はオレ。


普段わたしは、たとえばバンドリーダーをしていても、しめるところはしめたりしつつも、基本的にはミュージシャンの自主性というもの、あるいは彼等の創作能力に全幅の信頼をおいて、基本的にはなるべく指示をだしたりしないで、ゆるやかに集団を統括するような方法をとっている。正確には、たとえば、自分のバンドのリハやレコーディングをしている時にも、わたしは、皆をあきさせないように、あるいはリラックスさせるように冗談をいったりしつつ、一発でいいテイクがとれるような準備をしたり、あるいは、なにか違う方向の音を希望する場合に、あえてそのことは言わずに、休憩にして、で、再び始まるさいに、変えたいこととは、全然ちがう要望・・・たとえば、ちょっと座ってる配置をかえて録音してみようか・・・みたいな提案をして、別のテイクをつくったり、新しい方法をさぐったりすることが多い。ま、この辺は経験で、ノウハウがあるというのではなく、あるいはあざとい技術があるのではなく、楽しく現場をやっていれば自然うまくいったりする・・・みたいな、もしかしたら、偶然わたしがもちあわせた才能のようなものかもしれない。ただこれがうまく機能するのは互いを良く知っているプロのミュージシャン同士の場合。
そうではないときに、この勘みたいなものの働きが、やはり鈍くなる。彼等とも同じように、緩急をつけてやればいいのだってのはわかっているのに、初回ワークショップはこのへんの自分の未熟さ、みたいなものを痛感してしまった。知的傷害者だからというだけではなく、まずは、子供たちに2時間なら2時間、集中してもらえるようなプログラムをしっかりつくらなければ、とても彼等彼女等を音楽の世界に引きづりこむことなんてできない。これは次回以降のわたしの課題。ここをなんとかしなければ彼等をひっぱって、公演にまで持ち込むことはできないだろう。
最初は彼等の個性をとらえて、どうにかアンサンブルを・・・とかおもっていたけれど、あえて乱暴な言い方をすれば、そんな奴等を尊重できるほど、オレがえらいもんでもない・・・ってのに、はっきり気づかされました。そう、個性なんてオレが引き出すもんじゃなくて、彼等が勝手に出してくるもの、ってか、信じられないくらい、もう充分に個性的で、それは揺らぐようなものでもないだろう・・・この部分はプロのミュージシャンとなんら変わらない。オレはそれを受け入れればいい。だから、その彼等の演奏をいかんなくひきだせるような土俵をつくればいいんだよ・・・ってのは理屈ではよくわかる。これもいつものレコーディングとまったくかわらない。じゃ、問題はなにかというと、それが的確なタイミングででてきてくれない、おどろくくらい気まぐれ(にオレには見えて)で、だからこちらがだまっていても、すぐにアンサンブルができるわけではなく、非常に散漫な状態になってしまうのだ。これ、彼等を2時間なら2時間、音楽にくぎづけにしてしまうような、リーダーシップをオレが持てていないことも大きな原因。
あ〜〜悔しい。めちゃ悔しい(関西弁風)
音楽やることに集中させなくちゃ、はじまらないもんなあ。みんな楽器をさわったり、ターンテーブルをいじったりするときに生き生きしていて、もうそれはびっくりするくらいなんだけど、これを、皆でアンサンブルをやっているって方向、彼等自身がそういうことを楽しんでるって実感をもてるような内容を提示したなくちゃなあ。で、かつそのうえで最終的には3月5日のジーベックホールでの発表会でなんらかの素敵な音楽提示できるようにしなくてならないのがオレの使命なわけで。う〜〜ん、できそうな予感はある。でもそのミチは甘くはないぞ。


教室には子供たちだけじゃなく父兄の方もいらしていて、彼等彼女等からもワークショップ終了後いろいろアドバイスをいただいた。ありがたい。みなさん、子供達のために大変な労力をさいてきている方達だ。オレのように、家庭をつくったりDNAを後の世代に残すことを拒絶してしまった人間とはわけがちがう。そんな彼等彼女等の子供への思いのこもった一言一言はやはり重い。具体的は講義をひっぱっていくコツというか、養護学校なんかで具体的にやっている方法を提示いただいた。そうだよな〜、オレ、そういうところにも見学に行くべきだった。時間はないが、機会があったら見てみたい。
その後もゲストや学生達と長い時間討論。みんなものすごいまじめさと情熱で、頭が下がる。この中ででた提案で、教室を小さくしてみては・・・ってアイディアがすごく気に入った。場所の設定で集中力はかわるはず。ほかにも沢山アイディアがでたけれど、直接の指導方法だけではなく、こうした場の設定から考えていくのは、本当に重要だと思う。でもこれって、いつもオレが自分のバンドでやっていることと、そういう部分では変わらない。もしかしたら、恐れずに、いつも自分がやってきていることを流用してみてもいいのかもしれない。


そんなわけで、1回目の感想は「悔しい」ってのが正直なところ。
このまんまずるずる負けたくねいぞ、オレ。くそ〜〜〜〜。
次回は、あいつら全員絶対にオレの音楽にひきづりこんでやる!


あ、ネガティブなことばかりかいているけど、それだけじゃないですよー。今回一番の収穫は、オレが全員の名前を覚えて、ひとりひとりと初めて接して、お話できたこと。もうこいつとは友達だって言える子もいるし、まだ、なかなかコミュニケーションのとれない子もいるけど、この話を受けたときに、どうしていいかわからないなあと思ってしまった抵抗感のようなものは、すっかりなくなった。
この先短い間だけど、なんか楽しくやれそうな感じ。