リスボンから持ち帰った宿題

otomojamjam2006-08-07

今日のギターは、なんと60年代日本ビクター社製。エレキブームだった60年代、日本の家電メーカーやレコード会社、はては家具屋や下駄屋までもがこぞってエレキギターを発売していたらしい。なかなか香ばしいデザインです。




さて、満員のエコノミーに押し込められてリスボンより無事帰国しました。で、昨日は16時間連続で爆睡。今日はカイロに行ってすっかり疲れをとって、ついでに3ヶ月ぶりに髪も切って、さっぱりした頭で、吉祥寺バウスシアター「闇打つ心臓」の上映前に長崎監督と対談をしてギターソロのミニライブ。われながら結構体力あるぞ47歳! 
そのあとは映画制作会社のオフィスシローズやスローラナー、バウスシアターの面々に長崎監督とで打ち上げ。
いつもながら楽しいひととき。




さてリスボンではソロ公演のあとは、ジャズフェスの野外ステージでROVAオーケストラによるエレクトリックアセンションに参加。私が参加するのはCDになった最初のサンフランシスコ公演と、そのレコ発のサンフランシスコ公演に次いで3度目。ほかにカナダで1回、オーストリアで1回公演をおこなっているので、アセンション自体は5回目の公演。毎回すこしづつメンバーが違うが、基本はROVAサクスフォンカルテットの4人にFred Frithのベース、Nels Clineのギター、サウンドエンジニアMyles Boisenの西海岸組。ここにドラマー1名、エレクトリック・ヴァイオリン2名、エレクトロニクス関係が3〜4人の他にも様々な楽器加わるというが基本編成。今回はTom Rainey(ds),Carla Kihlsten(v),Jenny Scheinman(v), 田村夏樹(tp)、Thomas Lrhn(synth), Andrea Parkins(Acordion,electronics) それにわたしの合計14名。これだけのメンバーだもん。たぶんとてもいい演奏だったと思う。


実は10代から20代にかけてコルトレーンの大ファンだった。あまり書いてこなかったけど、ものすごい好きで、チェイシン・ザ・トレーンとかは16分間の彼のソロを丸々あわせて鼻歌で歌えるくらい好き。黄金のカルテットによる演奏だけでなく、初期のものも、後期のフリーも、静かなバラードや、エリントンとの共演盤もみんな好きだったのだ。いつのころかあまり聴かなくなってしまったけど、今でも好きなことには変わりない。


そのコルトレーンがフリージャズ化していくシンボルともなった作品がアセンション。でもって、今ROVAオーケストラがなんでアセンションなんだろう・・・。なんてことを考えていたら、ものすごい長文になってしまった。で、あんまブログで長い御託をうだうだ書くと、「ウザッ」の一言で片付けられてしまいそうなので以下数十行は割愛。
結論から言うと、今アセンションをやる意味が、オレにはわからない。参加しておきながら言うのもなんだけど。もしあるとしたら非常に素敵な古典作品として、たとえばバッハなんかと同じようにいつの時代でも再解釈して演奏することは可能だ・・・ってことなんだけど、それは正直、自分には、あまり興味のあることではない。
すばらしいメンバーとの共演は、プレイヤーとして非常に楽しくもあるのだけど、そんなわけで、正直なところ、アセンションをやることそのものには複雑な気持ちだ。かと言って、頭から否定する気にもなれない。というのは、おそらく、ROVAのような、ある種フリージャズを出発点にして素晴らしく先鋭的な活動をしてきた人たちにとっては、メインストリームのフリージャズそのものが滅びつつある(滅びてしまった)ことに、なんらかの思いのようなものがあることを知っているからだ。それが、こういう形ででていいのかどうか、正直、わたしには判断できない。どうなんだろう?
自分自身でやった「Out to Lunch」については、ROVAのコルトレーンよりは、オリジナルをずっとつきはなして、自分自身の問題にしているつもりではあるけど、それにしたって確信があるわけじゃない。ROVAのコルトレーンと大同小異なのかもしれないし。
このへんは、オレ自身への、この先の宿題。





打ち上げからもどって、今は「闇打つ心臓」のオリジナル8mm版のさしかえの音の調整をプロツールスと向き合いながらしているところ。
オレの中では、こんな作業も、ドルフィーも、ベイリーもFilamentも全部つながっている。