『アンサンブルズ2010 共振』に向けて

otomojamjam2010-09-29

再び水戸に滞在してました。福島の実家からは、かつてわたしが10代から30代にかけてて聴きまくっていたカセットテープ、約3000本を水戸に持ち込みました。毎年使っている大量のターンテーブルも水戸にやがてやってきます。ほかにも、まだ明かせませんが、様々な音楽に関わるマテリアルがあつまりつつあります。さてこれをどう使うか。展示と特殊コンサート、大きな二つの柱を軸にいくつものプロジェクトが今年秋から冬にかけて『アンサンブルズ2010―共振』の名のもと水戸で行われます。詳細は水戸芸術館のホームページではなく(ここのページは見にくくてあまり役に立たなそうなので)こちらのページでお知らせします→http://www.artmetoo.jp/ensembles/index.html
ということで、まずはわたくしからステートメントを。


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『アンサンブルズ2010―共振』に向けて ― 大友良英


「空間に音を出す。その音が音楽になる。」
僕ら音楽家がやっていることを一言で言えば、たったこれだけのことだ。それも主に前者の音を出すほうが音楽家の担当。後者は聴く人たちの役目だ。聴く人たちのココロやカラダが反応することではじめて音が音楽になるんだと思う。音楽家にできるのはそのちょっとした手助けくらいだ。
『アンサンブルズ』展でいつもわたしがやっているのは、この「空間に音を出す」という仕組みを「音楽への可能性」に向けてつくることなのだ。わかりやすく言うと、僕らは音の出るなんらかの装置や仕掛けをつくり、それを聴く人が、自分たちで自分流に音楽を発見できるような仕組みを作ること。それも今まで見たこともないような仕組みを。特殊コンサートも音の展示も、その意味でみな共通した問題意識からスタートしている。
最初の『アンサンブルズ』展は2008年山口のYCAM。音の展示をするには理想的とも言えるこの施設で、わたしは思う存分これまで考えてきたことを試させてもらった。「アンサンブルズ」の名前のとおりたくさんの人たちとバンドをやるように作品を作るという試みは大成功だったと思う。その試みを実際に自分の住んでいる街に移してみたのが2009年の『アンサンブルズ・休符だらけの音楽装置』展だった。東京を中心に様々な場所で数え切れないほどの特殊コンサートや大小さまざまな展示をやってみた。理想的な空間から、実際に自分の暮らしている不自由な日常の中で、「アンサンブルズ」の発想はどうサバイバルしていけるのかが大きなテーマだった。実際に街に出るというは、自分の理想どおりになんか決していかない。でも逆にその障害から生まれる工夫や新たな人間関係が作品をより生きたものにしていったように思う。
今度はその方法を、自分の住んでいる街ではなく、水戸という街で試すことになった。でもなんで、水戸かって? 一番の理由は、『アンサンブルズ』に共鳴してくれた水戸の人たちから熱心な誘いかけがあったからだ。実は、昨年水戸でパレードや特殊コンサートをするなかで何度も水戸に足を運び着々と今回の準備を進めていた。そんななかで浮かんだキーワードが「共振」だったのだ。山口や東京でやった展示から生まれた波が、別の場所にいた人たちの問題意識と共鳴しつつ、やがて新たな波を生む。さらには、そこで生まれた波が、様々な人たちにどんどん伝播し、水戸の地で共振しあいながら大きな波になっていく。この1年間の水戸での経験がそんな様子を予感させるなかで、今回のテーマは「共振」以外にありえないそう思うようになってきた。結果的に、作品そのものにも「共振」の仕組みが縦横に使われることになった。
「空間に音を出す。その音が音楽になる。」
今回はこの二つのセンテンスの間にもうひとつのキーワード「共振」をいれてみた。
「空間に音を出す。その音が様々な経路で予想もつかない「共振」を生む。そして、その「共振」がこれまでに見たこともない音楽になる。」
水戸のみなさん、しばらくの間おじゃましますが、よろしくお願いします。そして水戸以外のみなさん、ぜひ会期中水戸に足を運んでみてください。それも出来れば複数回。作品は一時として同じ瞬間はありません。時間とともに変化し進化していく様子も楽しんでいただければ幸い。水戸を知っているみなさんにとっても、知らないみなさんにとっても、きっと新しい発見があると思います。お楽しみに。



【展覧会概要】
 タイトル:大友良英「アンサンブルズ2010―共振」
 会 期:2010年11月30日(火)〜2011年1月16日(日)
       月曜休館 年末年始休み(12月27日〜1月4日)
 会 場:水戸芸術館現代美術ギャラリーおよび水戸市中心市街地
 http://www.artmetoo.jp/ensembles/index.html
 参加者:大友良英(音楽家)、菊地宏(建築家)、堀尾寛太、五嶋英門、中崎透、
     矢口克信、青山泰知、毛利悠子(ともに美術家)、
     近藤祥昭(サウンド・エンジニア)、高田政義(照明)ほか多数
 主 催:財団法人水戸市芸術振興財団、MeToo推進室
 助 成:財団法人文化・芸術による福武地域振興財団、
     財団法人アサヒビール芸術文化財
 特別協力:水戸商工会議所
 協 力:山口情報芸術センター[YCAM]、フォスター電機株式会社、
     フォステクスカンパニー、ヤマハ株式会社、株式会社かわまた楽器店、
     アサヒビール株式会社 GOK SOUND

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特殊コンサートほか各種イベント



10月30日 アンサンブルズ・パレード
水戸中心市街地を、マーチングバンドからリコーダー隊まで、ジャンルやスタイルの異なるさまざまなチームが思い思いの曲を奏でながら回遊し、街なかににぎわいをもたらします。最終地点の芸術館広場では出演者全員が大友さんの指揮にあわせて壮大なアンサンブルを即興で演奏。個性あふれる参加者の、いりみだれての演奏は必見です! しかも今年は踊り、大道芸、仮装なども対象となり、より賑やかなパレードに。みなさんも街に繰り出し、いっしょに楽しみましょう!
14:00〜16:00頃 ※雨天の場合は翌日順延
会場:南町2丁目〜泉町2丁目の国道50号線を中心とした水戸中心市街地と水戸芸術館広場 
http://www.artmetoo.jp/ensembles/index.html
前回のブログで紹介のアンサンブルズ・パレード、応募の締め切りは過ぎましたが、ぎりぎぎりまで非公式に募集続けますので、ぜひぜひ参加ください。一緒にパレードしましょう。




IBS茨城放送によるラジオ番組
大友良英 ラジオ・アンサンブルズ』
わたくしがパーソナリティを務め、『アンサンブルズ2010』のために滞在する水戸をテーマに、地域からゲストを招いて語りあいます。
日 時:10月10日(日)〜2011年1月2日(日)
    毎週日曜 22:15〜22:30
周波数:AM 1197 khz(水戸)、AM 1458 khz(土浦)
ゲスト:須藤文彦(水戸市政策研究会代表)、
    矢口克信(小料理喫茶ワシントン店主・美術家)などおよそ6名




11月6日 水戸 B2(ビーセカンド) 029-291-4282 begin_of_the_skype_highlighting              029-291-4282      end_of_the_skype_highlighting   
      大友良英インヴィシブル・ソングス
      出演 大友良英(g、vo) 近藤達郎(p,key,harmonica)
ゲスト やくしまるえつこ(vo) 阿部芙蓉美(vo)



11月28日 アンサンブルズ・フェス 
『アンサンブルズ2010 共振 オープン記念 特殊コンサート』
日時:11月28日(日)12:00〜18:00頃
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
出演:大友良英山本精一カヒミ・カリィテニスコーツ七尾旅人
   梅田哲也、山本達久ほか
料金:前売2800円、当日3300円 ◎小学生まで無料
   ◎中・高生半額(ご購入の際、学生証の提示をお願いします)
チケット取扱:10/28(木)発売開始
       水戸芸術館エントランスホール内チケットカウンター
       チケット予約センター Tel.029-231-8000(9:30〜18:00・月曜休館)
独自の音楽活動で注目を集めるミュージシャンが、展示作品の奏でる音と共演する異色のギャラリー内コンサート。ステージを設ける通常のコンサートとは異なり、展覧会会場の複数ヶ所が即席のステージとなります。異なるミュージシャンが別々の場所で同時に個々の演奏をしたり、エントランスホールのパイプオルガンを奏でたり、はたまた広場に飛びだしたり……、即興性を多分にふくんだ予測のつかない展開になるでしょう。会場脇にはMeToo推進室によるカフェが出現。半日ゆっくりお楽しみいただける特別イベントです。地元からの参加も予定されています。



1月9日 水戸芸術館大ホール
   大友良英 ダブル・オーケストラ + 音遊びの会


1月16日 アンサンブルズ2010 クロージングコンサート
     水戸芸術館現代美術ギャラリー
     出演 大友良英 吉田アミ 石川高 Sachiko M 堀尾寛太 ほか



アンサンブルズ・スタッフ募集
10月から2011年1月にかけて行う大小さまざまな「大友良英『アンサンブルズ2010ー共振』」のプロジェクトをいっしょに運営して下さる方・サポートして下さる方を募集します。ご興味とご都合にあわせて相談しながら担当を決めます。
とりわけ展示や電機関係のスキルのある方はぜひ。
活動期間:10月〜2011年1月下旬
活動内容:宣伝広報、パレードの誘導、展示の手伝い、
     特殊コンサートの準備・当日の手伝いなど
対  象:高校生以上ならどなたでも可能です。
     ※無償でのボランティアとなります。
申  込:(a)お名前、(b)年齢、(c)住所、(d)電話、(e)メールアドレス、(f)このプロジェクトで興味のあることをinfo@artmetoo.jpへ



写真は2008年〜2009年のENSEMBLES展から