KOREA REPORT 2

otomojamjam2006-05-14

それにしても、打ち上げで2件続けて食い物屋に行くのは、世界広しといえど、東アジアだけじゃなかろうか。特にソウル、それもここのオルタナティブな音楽家達の打ち上げは凄い。毎夜フルコースのはしご・・・日本でこんなことしたら破産してしまうってくらい皆食いまくる。


実例を。
コンサート初日→20名以上で焼肉屋、日本にもある牛の焼肉屋だけど、肉は牛カルビのみで、あとは各種キムチやチゲ味噌汁、ごはん等々でまずは極限まで満腹に。酒は焼酎かビール→で深夜12時をまわったあたりで今度は民族居酒屋へ。ここでは韓国のどぶろくのような酒マッコリを飲みながら、あさりのような貝の鍋(淡白な透き通ったスープなのにものすごく辛い)をつつきまがら、芋でできた韓国風お好み焼き(と言ってもチヂミとはちがって、もっと芋の味がする旨い食い物)をみなでパクパクと。


コンサート2日目→コアメンバー10名ほどで豚の焼肉屋へ。ここでも各種キムチやつけものとともに味噌汁もでる。豚は脂身の多い3枚肉をワインにつけたものを豪快ににんにくとともに焼く。こっちではかなりポピュラーな食べ物で、ここでも信じられない量を皆でたらふく食う。酒は果実酒のようなものとビール→その後は海鮮屋へ。すずきや平目(だと思う)の刺身や、ほや(ものすごくうまい)各種貝類、なまこ、うに、日本ではみたことのない犬のペニスのような形をした生き物のさしみ(これも旨い)等々、日本で食べたらひとり1万、2万はとられるようなものを皆でパクパク(こちらでは一人千円ちょいってところ)・・・。すべてのコースを下戸のオレは酒なしで、付き合う。何が楽しいって、ツアーミュージシャンの最大の楽しみは、世界中にいる気の会う仲間と、こうやって馬鹿な話をしながら旨いもんをつついて、あれやこれや冗談半分音楽の話やら女の子の話やらをすることだったりするのだ。言葉がかたことだって、いい演奏の後に旨いメシと酒があれば、ケンチャナヨ(韓国語で大丈夫・・・みたいな意味)なのだ。






さて、コンサート2日目は昨日のカフェから場所を移し、テアトル・チュウという、キャパ50人くらいの小シアター。場所はおなじ広大(ホンデ)界隈。この種のコンサートの多くはホンデ周辺でおこなわれるらしい。東京に例えるなら下北沢みたいなところだろうか。とにかく若い子だらけで、街は服屋と安いレストランやカフェ、居酒屋があふれ、ライブハウスやクラブも多い。深夜になっても人があふれているところは新宿のようでもある。


3年前に初めて彼等の企画で来た頃と一番変わったのは、お客さんがたくさん来るようになったことだ。以前は身内みたいな人が多かったのに、今回はかなりの数の客。しかもみな若い。なぜか美術系のような感じの女性が多い。確実に聴き手が増えてきているのかもしれない。オレのCDをあつかっているショップもホンデに出来たくらいだ。それと、もうひとつは、コンサートを無料にしたことも大きな原因だろう。どうせいつも赤字ならいっそのこと無料に・・・ってのもあったのかもしれないが、一番の理由は、僕等就労ビザのない外国人がお金をとって演奏することに、かなり厳しい法的な縛りがあるためだ。じゃ、みなの運営資金や僕等の交通費やギャラは?・・・なんて野暮なことは聞かないこと。お金がとれないんだから、あとは各自が工夫して工面するしかない。オレは彼等が裏でどれだけ苦労しているのか、知っている。そのことに対する仁義のようなものも、お互いにちゃんと感じている世界でもあるのだ。世の中、金だけで動いているんじゃないってこと。こんな馬鹿みたいに平和な、清貧な世界が、今でも僕等のまわりにはちゃんとあるのだ。世の中捨てたもんじゃない。



今日のセットリスト


1st set
1 パク・チョンヒ+ミン・ジウン 
  スピーカーのフィードバックを使ったDUO。後半アンプが焼ききれてしまったけど、いい演奏だった。2人とも20代そこそこらしい。
2 イ・ヘジュン(8mm映写機)+リュウ・ハンギル(古い時計の内部機械とlaptop)+ジン・サンテ(こわれたハードディスクとlaptop)
3 Filament(Sachiko M 大友良英



2nd set
1 佐藤行衛 ギター&テーブルトップギターソロ
2 チェ・ジュヨン(CD内部奏法)+ホン・チョルギ(TT)+Sachiko M(sinewaves)+大友良英(tt & g)
3 チェ・ジュヨン(feedback)+ホン・チョルギ(feedback)+Joe Foster(feedback)+大友良英(feedback)



今日はアジアンミーティングにも来てくれたジョーも参加。あいかわらす素晴らしい即興演奏家だ。会場にはアルフレッド・ハルトも。
Filamnetは最近ではめずらしいくらいの微弱音、録音ではとらえられなかったと思うけど、素晴らしい演奏だったと思う。今から3年前パク・ジェチュンが、ソウルでは絶対に聴き手に理解されないと言ったFilamentの演奏だけれど、間違いなく、熱心な聴き手がいて、しかもそれを理解し、自分達の問題として考えている人たちすらいるのだ。僕等は、そこの人に理解されるとかされない・・・みたいなこちらの思い込みで演奏を変えたりすべきではない。そう強く確信。



うってかわって最後の2つはかなりの音量の演奏。とくにジュニョンとチョルギのゴツゴツとした無骨で、起承転結のない(即興やノイズを含むいろいろな音楽の文脈を放棄した)演奏がオレは好きだ。Sachiko Mもオレも、かなりの音量と、無骨さで対抗した。これも面白かった。前にも書いたかもしれないけど、インカスの初期にあったような演奏を今の視点でやろうとしたら、このカルテットのような演奏になるのではないかとすらオレは思っている。



明日はこのカルテットで録音。非常に楽しみ。