KOREA REPOET 3

otomojamjam2006-05-15

大友さんはツアー中は太るほうですが、やせるほうですか・・・って、もう答えが分かりきってる質問が来たんですが、そんなもん太るほうにきまってるがな。ツアー生活を始めて15年以上、オレの体重はこの間10kg太りました。原因はもちろんツアー。ツアーは大抵太って帰ってくる。だって世界中旨いものだらけだもの。不味い・・・といわれるイギリスにだって、旨いインド料理屋や、いきつけの、香港並みのうまさの中華屋はあるし、ましてやイタリアやらスペインやら、あるいは東南アジア、東アジア(含 日本国内)みたいな、旨いものだらけの国にいった日にゃ、あんた、もう、目もあてられないって話で・・・どうするよ、もう。


僕等のようなミュージシャンの特権は、自分で金を使わずに世界中に行けて、でもって、観光で行ったらなかなか出会わないような地元の料理を味わえること。ツアーミュージシャンの多くは、次に行く街で何を食べるかが、一番の楽しみだったりするのだ。無論単に食べ物だけの話じゃない。そこで美味しいご飯を食べるもうひとつの大切な要素は、そこの街に一緒にご飯を食べに行く友達がいるかどうかも重要。同じものを食べても美味しさが倍になる。だからオレの贅肉は世界中の友人達との美味しい時間を共有した証・・・なんちゃって、これ負け惜しみのいい訳だな(苦笑)・・・なにを言おうと、医者には運動しなさい、痩せなさい・・・って言われるだけだ。




でも真面目な話、オレは観光のような旅行にはある時期からほとんど興味がなくなってしまった。旅先でするのは、観光ではなく、仕事だし、つまりは旅そのものが日常になってしまったせいもあると思う。これ、観光地に行くことを否定してるんじゃないから念のため。観光そのものはオフのときなら、時々だけどするし、わるいことじゃない。そういう意味ではなく、音楽の仕事でどこかに行く・・・というのは、そこの街をエキゾチックの対象としてみることではないということなのだ。世界中の底辺に生活する僕等のようなミュージシャンのネットワークというのは、実は皆さんが知っている以上にすごいものがあって(たとえばデレクがクリスマスに亡くなったときなと、報道よりもはるかにはやく、メールと口コミで、僕等世界中のミュージシャンの間をニュースが駆け巡った)、どこかの街に行くというのは、そこに住むそういったミュージシャン達との共同作業を前提とすることも多いし、主催者の多くはミュージシャンだったりするし、僕等を呼んでくれるのは彼等の汗の染み付いた金でだったりするのだ。だから最初から観光気分でなんか行くことは出来ない。お客さんが僕等をエキゾチックの対象としてみるのは自由だけど(でも、いい気分はしないが)、僕等の側が行った土地に対してエキゾチックを感じていては、少なくともオレのようなタイプの音楽家は、演奏不能になってしまう。うまくいえないけど、相手と対等だとおもわなくては演奏なんて出来ないのだ。相手というのはお客さんのことでもあり、主催者のことでもあり、共演者のことでもある。エキゾチックを感じていると、多分この「力関係」みたいなものが崩れる感じがするのだ。たぶんエキゾチズムというのは、異文化に対する自己防御に由来していっるような気がしていて、そのこともひっかかるのかもしれない。必要なのは自己防御じゃない・・・って話。




おっと、太る話からまったく違う話になっちゃった。




今日は昼にザル蕎麦。といっても韓国風にアレンジされたもので、蕎麦をタレにつけて食べるのは一緒だけど、タレの味も、薬味なんかも違う。日本の蕎麦好きの中には許せない人もいるかもしれないけど、オレはこれはこれで、別のものとして旨いと思った。で、夜は鳥を一匹まるまる煮込んだ鍋。これはいつも佐藤行衛さんがつれてってくれる店で、本当に旨い。一緒にいったソウルのミュージシャン達も初めて食べたといっていたくらい、どこにでもあるものではないのだが、もう鳥の濃厚な出汁を最後の一滴までつかう。この店が日本にできたら、大評判で列が出るに違いない。




なんか食い物紀行みたいになってきた。いけねえ、いけねえ。





今日はチェ・ジュヨン(CD内部奏法)+ホン・チョルギ(TT)+Sachiko M(sinewaves)+大友良英(tt & g)という編成で録音。硬質な、起承転結のない、エレクトロニクスなのに一切のエフェクターも通してない、非常にとぎすまされたスピード感ある無骨な演奏。昨日も書いたけど、インカスの1番、デレク・ベイリーエバン・パーカー、ハン・ベニングの3人による即興演奏「トポグラフィー・オブ・ラングス」がオレのなかの即興演奏の原点ともいえるものだけど、この演奏を今の視点でやったら、きっとこういう演奏になるだろう・・・といったような内容。無論、まったく似ても似つかない演奏だし、オレ以外の3人はそもそもこのレコード(CDにはなっていないはず)自体知らないはずだ。ただオレの中では、確実につながっていて、やっとここまで来たぞという感覚。なにより、今のオレには必要な音楽。凄いアルバムになると思う。







ソウル最終日の15日はソウルの中心地にあるアートセンターNabiで6時から、Sachiko Mとわたしのソロと、それぞれのレクチャー。