素敵な雑誌が送られてきた

otomojamjam2006-12-26

Improvised Music from Japan EXTRA 2006 ベルリン特集』が送られてきた。アンドレア・ノイマン、アネッタ・クレブス・・・90年代末に出会ったベルリンであたらしい即興演奏をはじめたミュージシャンたちの特集が組まれている。文字だけでなくCDが2枚もついて2500円・・・って安すぎないか。いや、安すぎる。IMJさん、これで本当に採算がとれるの? 
と、まあ、まるでサクラのような物言いになってますが(笑



なにか新しいことがはじまるときは、いつも、ものすごくドキドキする。90年代後半、自分のことで言えば、GROUND-ZEROを解散したあたり、日本で吉田アミ、ユタカワサキ、永田一直、杉本拓、Sachiko M、秋山徹次、中村としまる等がなにか今までと違うことをはじめだしていたときに、カナダではマルタン・テトロが、ベルリンではアクセル・ドナーやアンドレア、アネッタ達が、ほぼ同時期になにか独特なことをはじめていて、そうした人たちが、いつのまにか出会っていったり、交流をはじめたりするのを見ているのは、本当に面白かった。いわゆる「音響」と呼ばれたようなムーブメントだ。



でも、どんな新しいものでも、旬な時期は限られていて、早くて2〜3年、大抵は数年以内には、新しいものではなくなっていく。初めてこういう音楽を聴きだした70年代から何度となく繰り返されているお決まりのあれだ。新しいものとは、その新しさゆえに、簡単に古いものあつかいされる。流行の服も、シリアスといわれるような音楽でも、お笑い芸人でも、その意味では全然かわらない。
ただ、オレは、いつも、この名づけようもない新しい音楽が生まれてくる瞬間への強い愛着と興味があると同時に、ブーム(ここはあえて、はっきりとブームと言い放ってしまおう)が去ったあとに、何が残るか、いったい、そのあとどうやって各人がサバイバルしてくのかのほうに、それ以上の強い興味があるのだ。
世の歴史にあてはめて安直な例えをするなら、革命政府樹立と言うドラマチックなわかりやすい現場以上に、革命をしようと青年たちが思い出しうごめきだすときと、あとは実際に革命政府を樹立したあとに、その人たちは本当に政府を運営していけるのか・・・というほうにこそ興味がある。革命しつづけることが重要なのではなく(そんなことをしていたら、世の中は戦争と殺戮、否定と権力の移動だけが、常につづくことになる)、実際に死ぬまで続くいつもの日常の中で何をしていくのかという実に地味で忍耐強い話だ。その意味で、わたしはちょうと1年前に亡くなったデレク・ベイリーの生き方にずっと興味を抱き続けてきたし、常に変化し、平行していくつものことをやり続けた高柳昌行が好きだった。杉本拓や秋山徹次等、前段で名前をあげた人たちの今を見ていると、彼らが単なるブームの中の音楽家ではなく、本物であったことがより鮮明になってくる。今だからこそ見えてくるものがあるということだ。



問題はなにをはじめるかだけではなく、はじめたものに対しどれだけ責任をとれるのかという話でもあるのだ。



ブームの後にこそ、それぞれのミュージシャンの真価が発揮されるとわたしはそう思っている。だから、今このベルリンの本が送られてきたことは、わたしにとっては実にタイムリー。じっくり読む、聴く価値がありそうだ。



本来なら、こんな特集は普通の音楽雑誌がカルチャー雑誌がとっくにやっていなくてはいけないわけだけど、ご存知のように1980年代以降のほとんどの日本の音楽雑誌は広告収入で成り立ってるわけで、広告に関係ない記事は、編集者の粋な裁量でもないかぎり出ないわけで・・・。


Improvised Music From Japanという日本で初のインターネットによる即興音楽の情報サイトを10年前に立ち上げた鈴木美幸の革命ともいえる仕業が、こうして10年もつづき、こんな雑誌や、どう考えても売れなさそうな、しかし非常に興味深いCDを大変な思いをしながら出し続けている・・・わたしはこの責任ある持続にこそ、革命以上に興味があるのだ。
その意味では、このベルリン特集は、僕ら自身の問題でもあるし、出してる鈴木さん本人の問題でもある。そして、そういうものでなければ、わたしは信用しない。



以下は、鈴木さんと同じように、あるとき会社をやめ、自分自身の革命をはじめてしまった敬愛する友人、ダウトミュージックの沼田順の日記からのコピペ。

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IMJの鈴木さんから発行されたばかりの『Improvised Music from Japan EXTRA 2006 ベルリン特集』を贈呈していただいたので、ここでその紹介をします。今回はバイリンガルではなく、日本語オンリー。したがって普段の号より薄い。しかし内容が濃い。濃すぎる。CDの内容も興味深い音楽ばかり。日本向け用に、と意識したのかどうか知らないけど、コンパイルしたニコラス・ブスマンさんのナイスなセンスが伺える。呑み屋のおばちゃんの会話とか(笑)。ほとんどが知らないミュージシャンばかりなので、私にとってはとても興味深いのだ。なんか最近70年初頭のハードロックとかアメリカンロックとか、名前を知ってても今まで聴いたことなかったやつとか買ってるので、そういうやつはおおよそ音楽の見当がつくじゃないですか。まあそれはそれで楽しんでるんだけど、ほとんど知らないミュージシャンのコンピはやっぱりとても刺激的だ。久しぶりに熱中して聴いたCD。しかも2枚。


本の内容は中村としまるがベルリンに出向いてベルリンのミュージシャンにインタビューしたもの(アネッタ・クレプスのみ杉本拓によるメール・インタビュー)。こちらもとても深い内容で、中村としまる、杉本拓、両人に敬意を表します。もう店頭に出てるのかな? 面白いよ!

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ってことで、以下はIMJの通販のページからのコピペ

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ときにベルリン・リダクショニズムと呼ばれた一大潮流は、1990年代後半から2000年代前半のベルリン即興音楽シーンの象徴となり、他のヨーロッパ諸国、日本、米国と国外のシーンへも大きな影響を及ぼした。そのムーヴメントも一段落して、渦中にあったミュージシャンたちの新たな道程探しは既に始まっている。本増刊号は、ベルリンに住む12人のミュージシャンと1組のグループへのインタヴュー記事と、2枚のCDに収録した全18曲(総勢30名以上のミュージシャンが参加し、やはりほとんどがベルリンの住人)で構成。その多くは潮流に深く関わったが、そうでないミュージシャンも含まれる。インタヴューでは、各人の個人的な活動だけでなく、ベルリンのシーンについての意見に多くのスペースを割き、90年代後半以降のベルリン・シーンのダイナミズムを如実に浮かび上がらせる本音の話がそこかしこに顔を出す。インタヴューは2005年1月に中村としまるがベルリンを訪れおこなった(ただし、アネッタ・クレプスのみ2006年1〜4月に杉本拓がメールでインタヴュー)。一方、CDの人選は地元ミュージシャンで、ベルリン即興音楽の牽引役「ラボア・ゾノア」コンサート・シリーズの発足に関わったニコラス・ブスマンが担当。本号はひとつの時代を築いたベルリン・スタイルに敬意を表しつつ、現地ミュージシャン自身の言葉と演奏で、周辺ジャンルの音楽をも一部交えた今日のベルリン即興音楽事情を探る試み。CD2枚付き。全編日本語のみ。全80ページ。

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以下のIMJの通販サイトで買えます。
http://www.japanimprov.com/cdshop/goods/imj/imj-308-9.html
http://www.japanimprov.com/cdshop/index.html


あるいはontonsonでも通販してま〜す。
http://www.ontonson.com/index_j.html





あはは、これじゃ完全にサクラだ。でもこんな本ならよころんでサクラをやる。