マルセイユ初日Invisible Songs

otomojamjam2008-05-14

マルセイユ初日Invisible Songs

ナンシーからマルセイユまで車で8時間半。ツアーに出て半月の疲れが出たのか、ダウンしてしまった。バンマスがこんなことでいいのか・・・と思いつつも、マルセイユに到着したときは体動かず。でも10時間たっぷり寝たらすっかり元気になりました。
で、今日はマルセイユのギタリスト、ジャン・マルク・モンテラ氏が運営するスペース「モンテビデオ」でInvisible Songsのライブ。広さでいうとPITINNを一まわり大きくしたかんじかな。実はこのスペースには宿泊施設もあって、ここでみなで寝泊りしながら、ゆっくりサウンドチェックして、で夜はライブって感じで、本当にいいかんじでやらせてもらいしまた。体調がすぐに復活したのは、このゆったりしたペースのおかげかもしれない。

演奏のほうも素晴らしくて、超満員のお客さんからの割れんばかりの終わらない拍手。単純なオレはこういう反応に本当にはげまされる。浜田真理子山本精一アルフレート・ハルト、近藤達郎、Sachiko Mナスノミツル芳垣安洋、ZAK,そしてわたしの9人、ナンシーでもマルセイユでも、いやもう素晴らしい歌、素晴らしい演奏、素晴らしいサウンドでした。オレはとっても満足。こういう特定のスタイルに限定されない、街中にある日常生活がそのまま反映したような小屋のライブはいつも楽しいし、やはりこういう場こそが、僕等の場なんだなって思う。PITINNやレディージェーンがそうであるように。

実はその前のナンシーでのInvisible Songsは賛否両論という感じだったのだ。わたしがポップスやフォークをやる・・・ということに、ものすごく根強い抵抗が欧州ではあるというのも原因のひとつかもしれない。
これはわたしがフリージャズをはじめた10年前のときもまったく同じ反応で、なんでGROUND-ZEROのようなものをやらずに、保守的なフリージャズに戻るのか・・・しかも日本人がなんでジャズなんだという強烈な反発。今回もまったく同じで、何故、歌なのか、しかもポップスなのかという反発。アバンギャルドとか実験音楽とか日ごろぬかしてるやつほど、実は非常に保守的だったりするもので、この種の反発はある程度予想はしていた。逆に幽閉者のようなことをやると、この手の実験音楽好きは反発しない。むしろ大喜びなのだ。オレは、欧州のこういうシーンに育ててもらった恩義は感じているし、そういうシーンが好きではあるけど、スタイルの新しさばかりでモノを考えるアバンギャルド原理主義みたいな考え方には、もう辟易している。スタイルで音楽を聴くこと自体にも、オレはまったく興味がもてないのだ。そうじゃないだろが・・・と強く思う。幽閉者にしてもInvisible Songsにしても、オレにはどちらも重要なプロジェクトなのだ。もちろん、意見は否だけじゃ無論なくて、支持も沢山あって、これもI.S.O.がはじめて欧州をまわったときや、ONJQがはじめてまわったときとよく似た反応。こんなもんで、いちいちグラグラしてられるかっての。オレはこれからもやりたいようにやらせてもらう。

ここのところのわたしの音楽は、いってみれば自分自身の歴史と向き合うような作業をしているわけで、その歴史の持つ意味合いが、同じような歴史を歩んでいる日本の聴き手には比較的伝わりやすいというのもあるのかもしれない。最近よくカバーしてる「教訓1」の持つ意味は、言葉の通じるところと通じないところでは、意味合いがかわるだけではなく、そもそもこの歌の背景を知ってるか知らないかでも、ずいぶん聴き方がが変わってくるはずだ。ONJQの時もそうだったけど、私の場合は、これらの背景を伝えるような言葉抜きで、いきなりいつも欧州に音楽だけを突然持っていってるので、このあたりは、聴衆との間に、コンセンサスのようなものがすぐにはとれない・・・という部分もあるのだ。それが特にアバンギャルドメインのわたしの出るようなフェスだとなおさら。そんな文脈と関係ない、今日のようなクラブギグのほうが、ずっとストレートに音楽は伝わる。要は批評的に聴いてる客が多い場か、それとも楽しみ来ている客が多い場かの差かもしれない。
日本では、ブログなんかで、わたしの言葉が流通してるのもあって、このへんの齟齬は欧州よりはぜんぜん少ないように思うが、それがいいことなのかどうかはわたしにはわからない。ただ、たまたまわたしが日本語という、きわめてドメスティックな言葉をメインに使っているために、その言葉の通じるところと、通じないところで、異なる音楽の聴かれ方をしてる可能性があるというのはちょっと面白いし、興味深いことだと思っている。

まあ、そんなこんなの話はともかく、浜田さんの歌の素晴らしさ、みんなの演奏の素晴らしさは、きっと届いたんじゃないかな。



さて、明日は同じ会場で今度は幽閉者のライブ。





写真はオフの時間にくつろくメンバー達