シンポってなんなんだ?

KBS京都で4月9日夜24時半からはじまる『大友良英のJAMJAMラジオ』、第1回の収録が29日にせまっております。


第一回目は昭和テレビ音楽のダークサイドなんて言ったら本人に怒られるかな。わたしが子供の頃の無意識の耳に直撃してきたアバンギャルド音楽、ジャイアントロボや、スパージェッター、プレイガールの音楽を作った山下毅雄の話をしながらの30分間です。
そして2回目はわたしが右も左もわからずに映画音楽をはじめたころの話、90年代中前半の中国香港映画の話をしつつ、いまだCDになってない秘蔵音源や廃盤の音源のみで構成する予定。
ということで、番組へのおたより、要望、質問、リクエスト、ほかなんでもいただけるとうれしいでーす。 あて先は jam@kbs.ne.jp


現時点では、放送業界というか著作権なんたらかんたらの関係で番組を全編ネットにアップできないようですが、でもさ、ここだけの話だけど、だれかが勝手にustしたりyoutubeにアップしても、わかんないしね・・・あ、いやいや、オレはそんなこと薦めてませんよ、やれなんて言ってないからね。でもさ、オレも東京に住んでるわけだし番組聞きてえもなあ、いや「みんな勝手にustやって」なんて言ってないからね。念のため。



ustといえばさ、昨日の芸大のシンポがustされてるってんで、家帰ってから見てみたんだけどさ、もう3秒くらい見て、ログアウトしちゃった。いや内容の問題じゃなくてですねえ、オレ、なんてブサイクなブオトコなんだろうって瞬間的におもっちゃって・・・え? なんでいまさら、50年も生きてきてそんなことに気づくんだよって。まあね、そうなんだけどね。まあ、音楽家はしゃべるもんじゃねえなあって教訓なのかな。でもね、これでも必要があると思ってるから、ああいう場にでてってるのよ。それにしてもオレ、カッコ悪。広瀬さんとか、諏訪さんとかすげえかっこいいのに。実はドキュメンタリー映画の「KIKOE」もオレが出てるとこは目つぶってみてたのよ。鏡みるのも髭そるときくらいだからねえ。おまけに近頃はすっかり毛がさびしくなってきてるからさあ。もうええなあ、いけてるオトコって。
オレも今からいけてるオトコ目指してやろうかな・・・・あ、いかん、なんか自分がとってもアホに見えてきた。これ以上アホになったらやばい。こんなこと考えるのやめやめ。


え〜、そんなこと書きたいんじゃなくて、シンポの話。オレ、正直言うと、シンポで自身の作品をプレゼンするって気持ちがまったくわからないや。音楽家はそんな野暮なことすべきじゃないとオレは思ってるけどね。テメエの思いなんてどうでもいいもん。無論言葉が必要なときもあるけど、でもシンポで説明するってセンスがどこかひっかかる。まあ、やりたい人は勝手にどうぞ。ただし技術や科学あるいは研究の話ならよくわかる。そういうものは説明が必要だと思うし、事実そういう話は面白いしね。


そしてもうひとつ、こういう会が必要なのは普段ではなかなか出会わない者同士が、ある共通の問題を共有し、一緒に事にあたれる切っ掛けになるってことだ。昨日は、その意味でなんらかの切っ掛けになったなら、まずは初回としては良かったかな。諏訪さんがシンポの後に「なにか具体的なことをひとつづつやるしかないのだろうなと改めて思います」と言っていたのが印象的。
どこにも所属せず個人でやってるわたしにどんだけの力があるかわからないが、少なくとも芸大に所属している藤幡さんや、東京造形大に所属している諏訪さんには、現実を変えることの出来る力と責任があるわけで(無論それはものすごい困難なことではあると思うが)、そういうことを体を張ってやろうとしている人に、多少の力を貸す程度の経験はオレにもあるつもり。藤幡さんには「大友さんは学校嫌いでしょ」といわれましたが、まあ、学校は苦手ですが、そこで働く一人一人の人たちを学校のくくりで見たりはしないつもり。結局は人だもの。その人が面白いことをやろうとしてるなら学校どうこうは関係ない。




時代は、オレ等が若かった20世紀とは明らかに違っていて、当時僕らがいっていたアバンギャルドとかサブカルチャーみたいな発想では、今の10代、20代が、いや彼等だけでなく、僕らが直面してる問題の解決にはならないと思う。結局そういう発想は、西洋美術の文脈や、西洋で生まれた現代音楽やポップカルチャーの文脈の置き換えという意味では、西洋の芸術を輸入しようとしたかつての芸大がやっていたことと根本的にはかわらない・・・そんな風にしかオレには思えないのだ。かと言って日本発といわれている、ポップカルチャーのようなものや秋葉原的なるものにわたしはなんの希望も見出していない。歳をとりすぎたのかもしれないが、そんな浮かれたところに何かがあるとは思えないのだ。現実は、もっとせっぱつまってないか? もっとキリキリ音をたててないか? 
こんな問いは、結局は、んじゃお前はどうするんだ・・・に帰ってくるわけで、そうすると、返せる答えは、なにか具体的なことをひとつづつやるしかない・・・なのです。
諏訪さんや、わたしが子供との作業の話をしたのは、そのことを言いたかったからなのだ。ひとつひとつやっていって、生きてる間に何が出来るのだろうか。
そう考えると時間ないなあって思ってしまう。




会場には芸大の音楽の学生も先生もひとりもいなかった。なんなんでしょうね。この縦割りぶり。
そういや、オレ、美術系の学科からの講師の依頼はよくあるけでど、音楽の学校からはほとんどねえもんなあ。まあ、どうでもいいけどね、そんな話は。そんなことより切実なのは、あそこでオレが名前を出した梅田哲也とか堀尾寛太とか、吉田アミSachiko M、ユタカワサキのやってることって、どれだけ、ああいう世界に切実に響いているのかな? アルス、アルスて騒いでるくせにさ、結局美術にしろ、メディアアートにしろ、音楽の世界にしろ、作品を言葉で説明する人とか、プロモーションをしてる人だけが注目されてないか? 
本当ならキュレーターなり評論家なり、アーカイブをつくるべき研究者が、そうした自分から言葉で説明しない人たちの作品をひとつひとつ丁寧に検証すべきなのに、現実には、言葉を発している人の言葉を受けてるだけになってないか? オレがあの場で、あまりにもみな勉強不足だといったのはそういう意味だ。言葉だけのやりとりで、美術なり音楽なりを解釈してるようなレベルで、どうするんだよっていう、はっきりとオレからの挑発なんだけどね。




今夜24:10からNHK総合で『鬼太郎が見た玉砕〜水木しげるの戦争』の再放送あります。演出柳川強、主演香川照之、脚本西岡拓也、音楽大友良英。テレビドラマ史上に残る名作です。
お見逃しなく。